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錯覚  作者: 手絞り薬味
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妻最終話

 週末―――――。

 夫と私は車で出掛ける。


 観光スポットとなっている場所を手を繋いで歩く。

 昨日、夫の目の前で私は写真を破った。

 細かく、細かく。

 ゴミと化した写真を見て、夫は笑った。

 ああ、そうなんだ。

 私は確信した。


 夫はあの女より私を選んだ。


 夫の腕に抱かれながら、私は喜びに打ち震えた。

 私は勝ったのだ、あの女に。

 繋ぐ手に力を込めると、夫は口元を綻ばせた。


「由香里、写真撮ろうか」


「写真・・・?」

 そういえば、ウェディングドレスを着て写真を撮ったが、それ以外に写真を撮った事は無かった。

 夫はズボンのポケットから何かを取り出した。

「それ・・・」

「ん?カメラがどうかしたか?」

 デジカメなんて持っていたんだ。

 夫はそれを近くにいた人に渡した。

「由香里」

 並んで立ち、肩を抱かれる。


「撮りますよー!」


 デジカメを構えた若い男性が大きな声で言う。

 撮り終えた写真を確認して、夫は男性にお礼を言った。

「ねぇ」

 私は夫の腕に自分の腕を絡ませる。

「その写真、部屋に飾りたいな」

 私とあなたの写真を家中に飾りたい。

 顔を覗き込むと、夫は目を細めて笑った。


「ああ」





 大型スーパーで買い物をして、私達は家に帰る。

 買ってきた物を冷蔵庫に詰め込んでお茶でも淹れようかと思っていたら、夫が私の身体を後ろから抱きしめてきた。


「由香里・・・」


 それはベッドへの誘い。

 週末だけ、夫はこうして私を求める。

 寝室に移動して、ベッドの上で私達は見つめ合う。


「愛してる」


「私も・・・愛してる」


 夫の首に腕を絡ませ顔を寄せる。

 私達は明るい日差しの下で愛し合った。

 夫の目はしっかりと私を、私だけを見ていた。


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