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錯覚  作者: 手絞り薬味
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夫23

 一睡も出来なかった。

 朝、起きてきた由香里の顔を、俺はまともに見る事が出来なかった。

 由香里はいつもとなにも変わらない。


 どうして、いつから、どこに?


 溢れ出そうな言葉を飲み込む。

 なにか理由がある筈だ。

 考えなしにこんな事する女ではない。

 仕事から帰ってきてから、ゆっくりと話し合おう。

 自分に言い聞かせ、いつものように由香里と食事し、いつものように家を出る。

 ベランダから手を振る由香里に手を振り返し、俺は会社に向かった。





 マンションを見上げ、俺は深く息を吐く。

 やはりどうしても気になり、俺は午前で仕事を切り上げて帰ってきた。

 重い足を引き摺るようにして歩き、マンションの入り口で部屋番号を押す。

 軽いチャイムの音がするが、由香里は出ない。

 出掛けた?いや、そんな。

 ・・・・・。

 俺の知らないところで、由香里は何を考え何をしている?

 由里子との悲劇の記憶が蘇り、ザアッと血の気が引く。

 俺は結婚してから一度も使った事がない鍵を取り出した。

 エントランスを抜け、エレベーターに乗り、玄関の鍵を開ける。


 由香里、由香里。


 乱暴に玄関ドアを開け、見えたのは・・・開け放たれたままの自室。


 そこに居るのか?


 靴を脱ぎ捨て数歩の距離を急ぐ。

 そして俺が見たのは―――――。


「由香里・・・」


 散乱する、物。

 クローゼットの中の荷物は、すべて出されている。

 机の引き出しも開けられ、中身が床にぶちまけられていた。

 その机の横に座っていた由香里が、弾かれたように振り向く。

 由香里は目を見開き、這うようにしてこちらに来る。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」


 俺の足に縋り付き、由香里は泣きながら狂ったように同じ言葉を繰り返した。


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