表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錯覚  作者: 手絞り薬味
37/47

夫21

 結婚してから暫くの間、俺は由香里を抱かなかった。

 それは、由里子との初めての時のように、由香里から誘って欲しかったから。


 夜、俺達は一つのベッドに入る。

 抱きたい気持ちをこらえて由香里に背を向け、俺は眠った振りをする。

 少しすると由香里が俺の背中に手を触れ、そして縋り付いてくる。


 ああ、由香里が俺を求めている。


 追い掛けて手が届かなかった由里子が、今こうして由香里となって俺に縋る。

 えもいわれぬ快感が身体中を駆け巡る。

 由香里の温もりを感じながら眠れる幸せを噛みしめた。


 毎晩それを繰り返し、そしてついにある日、由香里が言った。


「どうして抱いてくれないの?」


 俺は興奮を必死に抑え振り向く。


「・・・抱いて」


 真っ直ぐ俺を見つめる瞳。


 『身体の相性も、大切でしょ?』


 由里子の声が聞こえる。

 その夜、俺は初めて由香里を抱いた。

 由里子に教えられた通りの方法で。


 『そう、上手よ』


 響く由里子の笑い声。

 俺の背に手を回す由香里。


「愛してる」


 愛してる。由里子、由香里。


「好き」


 囁く由香里。


 ああ、ああ。

 なんて愛しい。


「由香里、もう一度」

「好き」

「もう一度」


 愛してる、愛してる。

 何度でも言える。


 一生、離さない。

 一生、離れない。


 俺の愛しい妻・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ