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夫20
あっという間だった。
由香里は高校を卒業した。
卒業式の日、俺は由香里の最後の制服姿を見る為に仕事を休んだ。
ああ、涙を流す由香里の美しい姿。
式終了後、話し掛けようとする男達より先に俺は由香里に声を掛ける。
「由香里!」
振り向いた由香里が笑顔を見せる。
男達の恨めしい視線を感じながら、俺は由香里を連れて学校を後にした。
卒業式の翌日には婚姻届けを出し、由香里は『坂本由香里』になった。
それから暫くして、お婆さんは静かに息を引き取った。
ショックで呆然とする由香里に代わり色々と手続きをする。
お婆さんには由里子以外に子は無く、親戚もいないらしい。
小さな葬式をしてお婆さんを天国へと送った。
「お婆ちゃん・・・」
墓の前で泣きじゃくる由香里を、俺は抱きしめる。
これからは俺が守る。
由香里、由里子、幸せになろう。
俺達の新しい生活が始まった。