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錯覚  作者: 手絞り薬味
32/47

妻14

「昔・・・、ずっと昔、会った事がありませんか?―――――ここで」


 私が訊くと、坂本さんは目を見開いた。

「今と同じように、私が転けて、坂本さんが助けて、そして、―――――そう、そして頭を撫でてくれて」

 話しているうちに、記憶が次々と蘇ってくる。

 腕を引っ張る強い力、頭を撫でる優しい手、私を見つめる・・・切ない瞳。

「あれは、坂本さんじゃ―――――」

 私の言葉は、そこで途絶えた。

 何故なら、坂本さんが私を強く抱きしめたから。

 坂本さんは、私の髪を、背中を撫でながら、身体を震わせる。

 私はどうしていいのか分からず、だけど、坂本さんが泣いていたから・・・、その背中に手を回した。





「覚えていてくれたなんて、思わなかった」

 母の墓の前に立ち、坂本さんは私の肩を抱く。

「うん、忘れてた。さっきまで」

 やはり、あれは坂本さんだったのだ。

 小さな頃会った人と再会し、結婚する。それはなんだか―――――。

「運命の・・・人みたい」

 私が呟くと、坂本さんは肩を抱く手に力を込めた。

「『みたい』じゃない。運命なんだ」

 私達は、見つめ合う。

「俺達は再び出会い、愛し合う運命だったんだ」

 ああ、そうなのだろうか。

 今までまったく信じていなかった『赤い糸』というものを、私は初めて意識して・・・、それがなんだか恥ずかしい。

 私は赤くなっているであろう頬を誤魔化すように少し俯き訊いた。

「坂本さんは、あの時どうしてここに?」

 何故墓地に居たのだろうか?

 すると坂本さんは、私の頭を撫でた。

「墓参りに」

「墓参り?」

「ああ」


 誰の?


 だけど坂本さんが、あの時と同じ切ない瞳をしたから・・・、だから、私はそれ以上何も訊かなかった。


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