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妻12
祖母は入退院を繰り返しながら、緩やかに、そして確実に悪くなっていった。
学校と就職活動と祖母の看病。
そのどれもを上手くこなしたいて思いながら、どれもが中途半端になっている。
―――――疲れた。
休みたい。でも休む事は出来ない。
卒業は間近に迫っている。
「由香里ちゃん」
そんなある日、坂本さんが言った。
「結婚しよう」
結婚・・・?坂本さんと?
「俺みたいなおじさんは、嫌かい?」
嫌・・・じゃない。
「嫌じゃない」
坂本さんは私の手を握った。
「幸せにするよ」
ああ、私はこの人が好きなんだ。
この時初めて、私は自分の気持ちにはっきりと気付いた。
結婚すると言ったら、祖母は涙を流して喜んでくれた。
「必ず、幸せにします」
「宜しくお願いします」
病室のベッドの上で、祖母は坂本さんに深く頭を下げた。
私の高校卒業と同時に、私達は籍を入れる事にした。
「由香里・・・、お母さんにも報告しに行っといで」
「・・・・・うん」
正直、必要とは思えなかったが、祖母の言葉に私は頷いた。




