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錯覚  作者: 手絞り薬味
26/47

妻11

 就職先を探さなくてはならない。


 夏が終わり、周りは受験勉強で忙しい。

 私も学校の先生に、就職の相談をしているのだが・・・。

「難しいな。この不況だろう。募集している会社もあるが・・・、正直あまり勧められないところが多いな」

 想像以上に厳しい現実。

 片っ端から入社試験を受けに行くしかないのだろう。

 そして・・・、そんな状況に追い討ちをかけるように、祖母の具合がまた悪くなった。





「ごめんねぇ」

 病院のベッドに横たわり、祖母は謝罪の言葉を口にする。

 私は静かに首を振った。

 ごめんなさい。

 無理をしている事に、気付いていなかった。

 帰る際、偶然会った医者と少しだけ話をして、私は外に出た。

 暗い気持ちを抱えたまま電車に乗り、とぼとぼと歩く。

「あ・・・」

 家に近付いた時、見えた車に思わず声を上げた。

「由香里ちゃん!」

 坂本さんが車の中から飛び出して来る。

 気が付けば私は、坂本さんの腕の中で泣いていた。




「探しに行こうかと、思っていたんだ」

 坂本さんに支えられて入った居間で、私はボロボロと涙を流した。

「お婆ちゃんが・・・、また入院して・・・」

「ああ」

 坂本さんは私の背中を優しく撫でながら、話を聞いてくれる。

 やがて・・・涙も声も枯れた時、坂本さんが立ち上がろうとした。

「嫌・・・!」

 咄嗟にその腕にしがみつく。

「行かないで・・・」

 坂本さんは目を見開き、それから私を強く抱きしめた。

「・・・・・ああ」


 その夜、坂本さんはうちに泊まった。

 一つの布団で、ただ手を繋ぎ、私達は眠った。


第1話(妻1)で、主人公の苗字が「斎藤」となっていましたが、正しくは「坂本」です。

お詫びして訂正します。


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