妻2
それを見付けたのは、偶然だった。
『掃除は自分でやるから、入らないでくれ』
そう言われていたのに、その日私は掃除機を片手に夫の部屋に入った。
下手な鼻歌なんて歌いながら、隅々まで綺麗にしていく。
勿論クローゼットの中も・・・。
「あ・・・っ」
そしてその時、うっかり端の方に置かれた荷物に、掃除機のヘッドを当ててしまったのだ。
「あー、しまった」
崩れてしまった荷物を元通り戻そうとして、ふとそこに、まるで隠されるように置かれた箱に気が付いたのだ。
まさかエッチなDVDでも入っているのだろうか?
「まさか、ねぇ」
真面目な夫がそんな物を持っているとは思えないが、もしかして・・・。
いけないとは思いつつ、箱を部屋の真ん中に持って行き、そっと蓋を開けてみる。
「―――――え!」
一番に目に飛び込んできたのは、微笑む自分。
しかしよく見ると、それが自分ではない事に気付いた。
「これって・・・」
知っているが、知らない女。
今は亡き祖母の家の仏壇に、一枚だけ飾ってあった写真―――――。
何故?
微笑む女の横で、笑う若い夫の姿。
何故?
私は夫のこんな顔、見たことが無い。
「・・・・・」
知り合いだった?
ならば、隠す必要など無いではないか。
箱の写真を手に取る。
一枚一枚見ていくと、キスをしている二人の姿があった。
何故?いや、そういう事なのだろう。
でも理解出来ない。
「・・・・・」
私はその写真を、ビリビリと破いた。
そして思い出す。
夫と初めて会ったのは、何処だったか―――――。
「・・・・・」
細かくなった写真を、掃除機で吸い取る。
箱をクローゼットに元通り戻した。
・・・素っ気ない夫がたまに見せる、優しさが好きだ。
この生活を壊す気も、夫と別れる気も、私には無い。
夜―――――。
ベッドの中で、夫の背中に手を触れる。
「ねぇ、・・・好き」
あなたが好き。
夫は振り向き、私を見た。
私・・・?
本当に夫が見ているのは?
それでも・・・。
夫はその夜、私を優しく抱いてくれました。