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錯覚  作者: 手絞り薬味
2/47

妻2

 それを見付けたのは、偶然だった。


 『掃除は自分でやるから、入らないでくれ』


 そう言われていたのに、その日私は掃除機を片手に夫の部屋に入った。

 下手な鼻歌なんて歌いながら、隅々まで綺麗にしていく。

 勿論クローゼットの中も・・・。

「あ・・・っ」

 そしてその時、うっかり端の方に置かれた荷物に、掃除機のヘッドを当ててしまったのだ。

「あー、しまった」

 崩れてしまった荷物を元通り戻そうとして、ふとそこに、まるで隠されるように置かれた箱に気が付いたのだ。

 まさかエッチなDVDでも入っているのだろうか?

「まさか、ねぇ」

 真面目な夫がそんな物を持っているとは思えないが、もしかして・・・。

 いけないとは思いつつ、箱を部屋の真ん中に持って行き、そっと蓋を開けてみる。


「―――――え!」


 一番に目に飛び込んできたのは、微笑む自分。

 しかしよく見ると、それが自分ではない事に気付いた。

「これって・・・」

 知っているが、知らない女。

 今は亡き祖母の家の仏壇に、一枚だけ飾ってあった写真―――――。


 何故?


 微笑む女の横で、笑う若い夫の姿。


 何故?


 私は夫のこんな顔、見たことが無い。


「・・・・・」


 知り合いだった?

 ならば、隠す必要など無いではないか。

 箱の写真を手に取る。

 一枚一枚見ていくと、キスをしている二人の姿があった。


 何故?いや、そういう事なのだろう。

 でも理解出来ない。


「・・・・・」


 私はその写真を、ビリビリと破いた。

 そして思い出す。

 夫と初めて会ったのは、何処だったか―――――。


「・・・・・」


 細かくなった写真を、掃除機で吸い取る。

 箱をクローゼットに元通り戻した。


 ・・・素っ気ない夫がたまに見せる、優しさが好きだ。

 この生活を壊す気も、夫と別れる気も、私には無い。




 夜―――――。

 ベッドの中で、夫の背中に手を触れる。


「ねぇ、・・・好き」


 あなたが好き。


 夫は振り向き、私を見た。


 私・・・?

 本当に夫が見ているのは?

 それでも・・・。


 夫はその夜、私を優しく抱いてくれました。


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