表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錯覚  作者: 手絞り薬味
17/47

妻6

「付き合って欲しい」


 学校からの帰り道、呼び止められて、告白された。

「ごめんなさい」

 今、それどころではないの。

 私はよく、告白される。

 見た目だけは、まあまあ良いからなのだろう。

 話した事もろくにない相手と、どうして付き合おうなんて思うのだろうか。

 私には、今一つ理解出来なかった。





 静かな廊下を、祖母の病室まで歩く。

「こんにちは」

 隣のベッドの人に挨拶しながら祖母の元に行くと、今日は少し具合が悪そうだった。

「由香里・・・」

「しんどい?」

「ちょっと熱が出ただけだよ」

 負担にならぬよう、早く帰ろうか・・・。

 そう思っていると看護師さんがやってきて、先生からお話があると言われた。

 忙しい先生を待って、やっと話を聞くと、手術の日が決まったと言われた。


「宜しくお願いします」


 それ以外、何と言えばよいのか。

 祖母の汚れた寝間着などを袋に詰めて、病室を後にする。

 外はもう暗くなっていた。





 もうすぐ家に着く。

 その時、誰かが自宅の前に居る事に気付いた。

 え・・・?

 恐る恐る近付くと、それは夕方告白してきた男子だった。

 彼は私に気付くと、「中西!」と大きな声で呼んだ。

 何故私の家を知っているのか・・・。

 気味が悪い。

 逃げ出したい気持ちになったが、何処にも避難出来る場所など無い。

 そうこうしているうちに、彼は私に近付いて来る。

「中西、俺と付き合ってくれ」

 それはもう断った筈。

 だいたい、私はこの人の名前さえ知らない。

「・・・無理」

「どうして!」

 ・・・何?分からないの?

「こんな、家まで押し掛けられても困る」

 本当に迷惑。

「俺の何がいけないんだ?」

「帰って」

 横を通り過ぎようとしたら、腕を掴まれた。

「やめて!」

「中西!」

 何なのだろう、この人は。

 掴まれた腕を振り解こうとすると、更にもう片方の腕まで掴まれる。

 洗濯物の入った袋が、道路に落ちた。

「嫌!」

 強引に引き寄せられて、揉み合いになる。

「あ・・・!」

 腕に痛みが走る。

「痛い!やめて!」

 恐怖が背中を這い上がる。

 助けを呼ばなければ危険だと思い、叫ぼうとした瞬間、口を手で塞がれた。

 嫌・・・!

 暴れても適わない。

 私はどうなってしまうのか。

 その時―――――。

 眩しい光と共に、一台の車が近付いて来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ