表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

魔術師オーウェル

 仕込みナイフだ。語るは遅いが動作は速い。鋭い悲鳴。王子は既に刺客の手によって地面に伏していた。

『王子』

 従者は叫んだ。続けて騎士が

『魔術師どのを呼ばねば』

と情けない声を上げる。その様子を遠くで男が見ている。とんがり帽子に黒いローブ。揺れる金の髪。魔術師である。彼は冷酷に

「王子なんて死ねばいいんですよ」

と呟く。

『魔術師どの』

『魔術師はいるか』

 遠くで叫び声が聞こえる。だが、魔術師は疲弊していた。彼は杖をつき、しゃがみこんでいる。実は、彼は既に別の場所で五回も竜退治を終えているのだ。体力は限界に近い。足下には剣。他に鎖がとぐろを巻いている。薄暗く雑然とした場所。魔術師に動く気配は無い。

 つまらん物語だ。王子が死ねば物語が終わる。王子を助ければ、陳腐な展開。また王子は竜を倒し、姫を助けて、めでたし、めでたし。何度目だろう。大きくため息をついた。

「面倒くさいったら、ありゃしない。死んでしまえ。王子様」

「おいおい。しっかりしてくれよ。魔術師オーウェル」

 突然の声。眼前の木が魔術師に語りかける。

「魔術師が行かなきゃ、王子様が死んでしまうよ」

 魔術師はただ冷艶な眼差しを木に注いでいた。木は続ける。

「王子様が死んでしまったら、たくさんの希望も死んでしまう。魔術師。さあ。立ち上がって。準備をするんだ」

 表の世界の声が聞こえる

『皆。魔術師を呼ぶんだ。大きな声で』

『さあ。せぇの』

 木は枝葉の腕で魔術師の行く道を促した。ぽっかりと四角い穴があいている。

『魔術師さぁん』

 大勢の助けが聞こえた。四角の穴から光が差し込んでいる。

「魔術師。ほら。時間だ」

 魔術師はようやく立ち上がった。ぎしり、と床が笑う。魔術師は呪詛を噛み殺す。ああ。行かねばならぬ。これは宿命なのだ。魔術師は飛び出し、そして叫んだ。

『はっはっは。諸君。魔術師が来たからにはもう安心』

 魔術師の到来に従者と騎士は喜び躍り上がった。

『おお。魔術師どの。王子様を助けておくれ』

 スポットライトが魔術師を照らす。子供達の歓声。

「どうして僕がお遊戯会なんかに」

 台本どおりの台詞の裏。魔術師オーウェル役の田中は毒づいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ