顛末と決着
サロンの外のベンチに、エリアスがいつもの不機嫌な顔をして座っている。
組んだ膝の上で頬杖をついて、もう片方の手は苛立たしげにベンチをとつとつと叩く。
ラズロはそれを視界の端に入れながら、サロンに備えられた最新の電話装置で署に連絡をしていた。
「……で……はい……そう……すか……それは……ですね……はい……はい……了解しました……」
チン。
受話器を置くと、シンとした沈黙が落ちる。
ベンチを叩くエリアスの指の音がやけに耳につく。
「…………旦那ァ、心配なのはわかりましたから、そうあからさまに苛々しないで……」
「…………してない」
ラズロの言葉に答えるエリアスの声音はいつにも増して冷え切って、言葉は刃のように鋭く断絶している。
ラズロは苦笑を深めて、今頃感動的な親子の対面を果たしているだろうサロンのふたりに思いを馳せた。
「……あぁそうだ。これはひとりごとなんですけど……旦那の店に来た大男、ウチの刑事たちがしっかりしょっぴいたみたいで……」
トントン、トン。
ベンチを叩くエリアスの指が一瞬止まる。
「男の供述と、物証の宝石箱から……レジーナもひっぱれそうですよ。少なくとも、誘拐教唆……殺害依頼……この辺りは立証できるんじゃないですかねェ」
ベンチを叩く指は、もう完全に止まっていた。
エリアスの視線が、ラズロの横顔に向く。それはなんとも、突き刺すような鋭い眼差しに感じられて。
「…………な、なんですかァ」
視線が痛すぎる。
ラズロが肩を落として、ちらっとエリアスを見返すと。
「………………いや。……………………やるな、警察の連中も」
エリアスの声音は、ほんの少しだけ、柔らかいものだった。
◇◇◇
――からりん。 からりん。
軽やかなドアベルの音がして、草臥れ果てた顔の男がやって来る。
その手にはどこそこの人気店の菓子の箱。
不機嫌な顔の店主が、ふんと鼻を鳴らす。
「そんな顔で来るな、運気が下がる」
「元々たいした運の巡りもなさそうな店じゃないですかァ……。ようやく始末書地獄から生還できたんですよぉ、もう少しくらい労ってくれても……」
はぁ、と鋭い溜息。
「その地獄を作ったのはおまえ自身の不徳だろ。知ったことか。…………まぁ、茶くらい入れてやる。これでも読みながら座って待て」
エリアスはそう言うと、カウンターに一通の手紙を置いてソファから立ち上がる。
「へぇ……?」
意外と優しいな、と思いながらラズロは椅子を引っ張って長い手足を丸めながら座った。
そうして、置かれた一通の手紙を手に取る。
【もじ たくさんかけるようになってきたよ。
おにいちゃんありがと。
おじちゃんにもよろしくね。
まいる・るいす・だーにんぐ】
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