父子の対面
「さぁ。ルイス坊ちゃんの居場所はわかりませんねェ」
「……な、なんだと」
ダーニング卿が愕然とする。
その顔を、息遣いを、視線の揺らぎをじっと眺めて、ラズロは苦笑と共に嘆息した。
「メイドが攫った子は、マイルという名前で……今も、ちゃんと無事に……食って、寝て、ちょっとは勉強もしてるかもしれませんね」
ダーニング卿の瞳に光が戻って来る。
しかしその顔は、必ずしも純粋な喜びばかりではなさそうだった。
「会わせてくれ……息子に……」
「少々、お待ちを……」
ラズロはそう言ってダーニング卿をその場に残し、サロンを出て行った。
キィ……。
サロンの扉が開く。
そこには、体に合った質素なシャツとズボンを身に付けた、華奢で小柄な少年――マイル――が立っていた。
ボサボサだった赤銅色の髪は綺麗に整えられている。
年の割に哀しみの色を深く湛えた瞳が、戸惑いがちにキョロキョロとサロンを見渡している。
「……おぉ……」
ダーニング卿は、マイルの姿をみとめると、ふらりと立ち上がって近付いて行く。
「………………こ、こん、にちは……」
マイルは緊張した面持ちで、ダーニング卿を見上げた。
ダーニング卿は、ゆるゆると膝を落とし、マイルと目線の高さを合わせる。
「…………ルイス………………いや…………マイルと……いうのか……」
マイルは困ったように小さく微笑んで、もじもじと指先を絡み合わせる。視線はダーニング卿に真っ直ぐには向かなかった。
「えと……オレ……じゃない、ボク……あの……お、おあいできてこうえいです……」
父と子の対面というには他人行儀な、けれど決して冷たくはない……まだ始まったばかりの何かが微かに芽吹くような、それは不器用なやり取りだった。
「あぁ……私もだ……マイル。会えて……嬉しい……」




