第95話 敵の名は
木箱に残っていた霊力の残りカスを調べて北愛子のものと一致しているな、というデータをもとに考察いると、日比野紳助さんが入ってきた。
「どうしたんですか」
「萩月がやられたっ」
東京の病院へ行くと、萩月は全身を包帯で巻いていて、まるでそろそろ死んでしまうような気がして、胸騒ぎがした。
「どうしてそんなことになった! 萩月! おい! 萩月!」
「おじさん、あまり騒いじゃいけない」
「やめてくれ、隼人くん。こいつは確かに変なやつだが、こんなボロボロになるまで負けるようなやつじゃないっ! これは怪異の仕業だっ!」
「なにっ! あなた怪異をご存じで!?」
「ああっ! 俺はかつて滝兄弟とともに怪異を狩るハンターだったんだっ」
一郎くんが驚いたような顔をする。日比野紳助さんは泣き腫らして、萩月を揺さぶった。
「萩月の『轍』が見える」
生命力に溢れている。まだ死んでいない。
声が響いてきた。
『日』
『比』
『野』
『隼』
『人』
『敵』 『は』
『北愛子』
『じゃ』
『ない』
『やつ』
『は』
『陸』
『獄』
『奴は』
『島陸獄』




