第94話 滝の心意気
6人の少年を殺害し、その遺体を唐揚げにして自社の弁当に混入させた異常者の弁当屋があった土地へ行ってみると、そこには田舎臭いセーラー服を身に纏った少女が立っていた。少女の頭は異様な形状をしていて、そして通行人は誰もそれを気にしていない様子だった。どうやら、一般人には見れないタイプの怪異であるらしい。
「日比野隼人が憎くありませんか」
「なんだ貴様」
少女は「あなたはあわれです。かあいさうです」とニタニタ笑いながら、言った。
「あなたはあなたのやりたいことをするべきです。力を授けるから、なりたい姿になるべきです」
少女から基準値超えのラハナー値を感知。これは悪性の怪異だ、と経験値が言う。
「あなたは日比野隼人が憎くあります。私は日比野隼人を殺す術を持っています。与えることができます」
「勝手に決めんにっ! あのガキゃ確かにクソだが仲間に囲まれてるんだっ! ならそれなりに思いやる気持ちのある人間だということだ! それを殺すだとっ! 滝の血をナメるなっ! 俺はナメられる事と違反者が大嫌いだっ!」
俺は怒り心頭に発していた。
「違反者、といいますと」
少女は首を傾げる。
「正義法だっ。お前みたいな悪魔は、そうやって罪のないものに嘯くのだろう! そうしてきたのだろう! それを違反と言うのだ! 正義に反する心を! 滝が! 受け入れるわけないだろ!」
少女は怒りでもにじませているように、震えた。
「あなたは何様なのですか」
「俺かっ。俺は……仲間を愛し愛されるその心っ! 正義という心の味方……! 正義の味方だ! そして、お前たちの様なクソッタレた悪魔の破壊屋だっ!」
びきり、と霊力を身に纏う。
「日比野隼人に手を出してみろ、俺が貴様をぶっ殺す!」
「そうですか。あなたも滝と言う訳か」
少女は嗤う。
「ならもう殺すしかないですね」




