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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ エクストラムマン 継承
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第77話 笑み

 2014年の1月1日、岩手県池首市の住宅1棟が全焼する火事がありました。火元の住宅からは8人の遺体が発見された。この火事について、2015年7月10日、この家に放火し、一家を殺害しようとしたという男が家族の付き添いで警察署に出頭してきたという。動機については「全く見当違いの恨みを抱いており、その場のテンションで火をつけてしまった」という。盛岡市警はこの事件について…………



 ◆



「君の思想に基づいた考え方で言うと……君のやったことはまさしく正しいだろう」


 師匠は、そんな事を言いながら珈琲をすすった。 


「人を愛し、怪異も愛する。そんな愛に生きる君だからこそ選べた選択だ。きっと鳩汰や君のご家族は君のことを誇りに思うだろうね」


 俺は「そうですね」と力なく返した。


「あんたが俺だったらどうしてましたか」

「アーシが君だったら? はは、おかしなことを聞くねえ、隼人くん。アーシは君にはなれないよ」

「腐すなよ」

「ほんとうに」


 師匠はいつもとは違う、一段とまじめな声で言った。


「ぼくは君にはなれないよ。隼人くん。君のように、優しさに塗れた人間じゃない。きっと殺すさ。だからこそ、ぼくは滝隼人にはなれない。君、もともと殺すつもりなんてなかったんだろ。ならなおさら本当に」

「一人称」

「なに?」

「なんでもないです」


 やや間があって、師匠は言う。


「これは鳩汰から聞いたことなんだけどね」

「君はたまにとてつもなく暗いところに落ちてしまう。しかし、その闇の中に潜む光は、誰もが羨むくらいに明るくて、光が目を潰すくらいに明るい光なんだ。初めて会ったとき、それがわかったよ。隼人くん。いいかい、隼人くん。君はきっと迷うし、君はきっと憤る。それは君に知恵と知識があるからだ。知恵と知識ならばアーシにもあるがね。それの使い方は人それぞれ違う。君は君の使い方をすれば良い。もし、その使い方がわからなくなって、自身がなくなった時は、君の中にある閃きだけは疑うな。迷って良いし、間違えて良い! でも疑うな! 疑いそうになったら、笑うんだよ」

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