第67話 杜撰な薬
ヤマタノチンコ(チンコが八つある)
ぎじり、と地面を踏みしめた所、その音に反応したのか雨の小坊主は顔を此方に向けると、鉄仮面のようなフードの下の異形を露わにした。それには赤い3つの複眼が付いていた。シシノケは「やめろ」と何度も呟いていて、ほんとうに身体の制御ができていないらしかった。
びかん、とあらわした赤色霊力でロープを作り、木々と絡めて、地を駆ける。一郎は何度か雨の小坊主の頭上にある水の塊を弾いてみようとしていたけれど、一瞬揺らぎはするものの、通用しないとわかると、直ぐに雨の小坊主の捕縛に集中し始めた。
この作業はふたりで間に合うと判断したのかなんなのか、隼人は東屋で薬を調合しはじめていた。どこに隠していたんだその大荷物を、と思いながら、師匠の動きに合わせて拘束していく。
そしてとうとう、師匠の拳が雨の小坊主にあたる。しかし、雨の小坊主もただで殴られた訳では無いのだろう。仰け反ったところから腰がギュルンと回り、師匠の腕に脚をかけた。そして、そのまま腕を巻き込みながら回転し、いずれかにして師匠を組み伏せた。
何が起こった?
「師匠、あと2分耐えろ」
「大いに結構」
雨粒が大暴れを開始した。ぶつかると大爆発を起こした。どういう原理で爆発しているのか、皆目見当もつかなかったが、それはとても痛かった。
「焦り出したな。察しは良い方と見た」
「日比野ぉ、日比野このクソボケレインコート……なんかやばいことしようとしてる……!」
「そうか。そのまま実況頼むぞ」
完成した白い液体を適当な、至極適当なところから取り出した注射器にいれると、雨水の爆発をどういう観察眼をしているのか、完璧に回避しながら、首に突き刺した。
「筋肉が緊張してしまうこと請け合いである、そういう薬を盛った」
「なんか……なんか病気にかかりそうなくらい杜撰な感じだったけど大丈夫か!?」
「大丈夫だ。問題はない」




