第66話 黒色と雨水
話を聞くと。
「──薬を盛った!? 同級生に!?」
「俺も驚いたんだよな」
「殴れば怯むことがわかっていた。こちらの攻撃は通用するわけだ。ならば、と。筋肉が硬直する薬をなんとか作った。粗削りだったから効果は薄かった。推定では3時間程度」
「そしたら3時間ぴったりだったから驚き」
弾は「イカれてる〜」と笑っていた。
「それじゃあ我々は六月池のところに行っているから、弾くんも飯を食ったら直ぐに来てくれ」
「こんな時に飯?」
「ああ。君は飯をこれから起こる全てより優先しろ」
「了解。強いね。こだわり。……そうだ。隼人、一郎。ここぞという所で、大きい技を放ちたい時に、『ハイパーパンチ』か『ハイパーキック』……! 技名を叫んでみて」
「ああ」
「もっといい技名はなかったのか」
「いいから行くぞ一郎くん。ちなみにハイパーパンチはとてもかっこいい」
「嘘だろ隼人」
六月池に到着すると、もう薬も限界だったらしく、シシノケにレインコートが纏わりついた。そして、ぽつり、と雨粒が落ち始めた。
「ルーツを知られることを嫌がっている……?」
「師匠、薬まだ持ってるがどうする」
「うーん……ぶっちゃけ倒すことは簡単だ。しかし……『気になる』ッ! 隠そうとするその『過去』が気になって仕方がないったらありゃしない!」
「狂ってんのか……? 遊びじゃないんだぞ」
雨粒は雨の小坊主の頭上に集まるとレーザー光線の様に射出した! 師匠はそれを回避すると、宝石を取り出し、握りしめた。
「変」
雨水光線は途中で折れ曲がり、2つに分かれると、師匠と隼人を襲った。
「あぶねェっ!」
「どうやら雨の小坊主はアーシと君を優先的に殺す事に決めたらしい」
「へえ。命に優先順位をつけるってのかい。気に食わないな」
隼人から「ずごん、ピカン」という怒っているような吐き出す勢いの強い音と共に、黒い輝きが辺り一面に広がった。そして、その黒を内側から侵食するように師匠の赤い輝きが現れる。そこにいたのはエクストラムマン。赤い複眼、白い強化皮膚の呪いの戦士。
「ワッシャー! 神をも打ち倒せる無敵の戦士だぜ!」
「3人はアーシの援護に回ってくれないか」
「了解」
隼人の顔には罅が入っていた。一郎の顔にも徐々に稲妻のような模様が入っていく。




