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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ レインコート
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第65話 6月6日

 6月6日。一郎とシシノケなんとかを加えて、隼人がまた池首に帰ってきた。集合場所のバーミンガムにつくと、一郎は少し眠そうにしていて、理由を聞いてみると、昨日の晩、雨の小坊主が大暴れしたのだという。


「あれは俺まさたちの膂力じゃどうにも出来ない……!」

「俺たち痣めっちゃ出来てパンダみたいなんだ。日比野家が虐待を疑われそうなんだわ」

「こんなでかいガキども虐待する根性現代人にないでしょ。しかし……そうか、そうか。君たちはパワーの問題があったか〜。そういえば君たちヒョロっヒョロだもんなぁ〜」


 隼人はムッとしたような顔をした。


「それで、どうしようって言うんだ。雨の小坊主を。師匠もヒョロっヒョロじゃないか」

「まずは原因を知るところから始めるべきだ。結論は急いではいけないよ」

「急に先生みてぇ」

「アーシは君たちの師匠だからね」


 そこに弾がやってきた。


「遅れました〜」

「遅すぎる! だが、これで弟子、全員集合だね!」

「ほんますんません」


 弾は隼人と一郎を見つけると、「よ! 久しぶり!」と元気に挨拶をして、一郎はそれに応えるが……隼人は何か気になる様子で、弾をじぃっと見ていた。


「何か隠したい事があるのなら……隠すことを上手くなれ。弾くん。君は隠しているつもりなんだろうがあまり上手じゃないな」

「な、なんだよ……」

「朝食を抜いたな」

「……なに?」

「口の開きが通常より遅い。今日あまり開いていないという事がわかる。何故か? 寝坊をしたから。何故か? 徹夜をして何かをしていたらしい。ではその何かとは何か? 手の具合から見て器用な事らしいがよく分からない。しかしそれがなんだ? 朝飯は食え。遅れてもいいから落ち着いて朝飯を食え。いいか弾くん。飯を食え弾くん。飯は身体を育むだけでなく心を健全に保つ為に役立つんだ。飯を食うと落ち着くんだ。1日が健やかになるんだ。食え。今食え」

「いいよ〜。ゼリーのやつ食ってきたし」

「よくない。良くないんだ、弾くん」


 背丈の差は16センチほど。威圧的に感じたのか、弾は一郎に助けを求めたらしい。


「言うこと聞いてやれ」


 と、一郎は小さく答えた。どうやら話を聞けば、この数年で隼人の中で「こだわり」が強くなったらしい。例えばバランスというのを気にするようになった。犬の糞を踏んだ時、「片足だけとは気持ち悪い」と言い、もう片方の足でも踏み直していたらしい。前に一郎か寝坊した時に朝飯を抜こうとすると、今のようにこだわりを持ち出してきて、言い合いになり、食い切るまで決して登校を許さなかったのだとか。


「えー……ええー……じゃあ食うけどさ……」

「ああ。食え。そもそも徹夜というのがいけない。君たちは長生きをしなければいけない。徹夜は健康の敵である。そういうのを理解していない訳では無いだろう」

「昨日一郎がメールで『早寝しろ』って言ってたのこれのことかぁ〜……でもコレを聞いたら何とも言えなくなるぜ」

「なに?」


 弾はリュックから赤いグローブとブーツを取り出した、


「これは……?」

「山猫さんに職人を紹介してもらって、ある程度原理がわかったから、作ってみた。あの時のやつより性能がいいぜ」

「コレを仕上げてたのか」

「ほう。なるほど。うん。ありがとう」


 シシノケがドクン、と脈打つ。


「3時間! ぴったり!」

「開けたところに移動しよう」

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