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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ レインコート
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第64話 久しぶり

 久しぶりに会った親友は少し痩せていた。

 飯をうまく食べられていないらしく、頬はこけていて、眠れていないらしく、目の下には隈があった。

 声は低く、腹の底まで落ちてくるように震えていた。

 ナイフのように触れたら切れそうな目の奥にある少し青みがかった瞳は濁っていた。

 彼は生きていた。鼓動は弱々しく……死んでいるのと変わらないような顔色で、でも、確実に生きていた。

 少しだけ口は悪くなっていて、少しだけ目が合う頻度が減っていて、少しだけ避けられているような気がしなくもないが、生きていた。

 ただそれだけで嬉しかった。小学生の頃のあいつは、冷笑主義者というか、単純に性格が悪かったが、それでも優しかった。

 そういうおかしなぬくもりの有るやつで、気がつけばあいつのことを考える始末だった。

 年末年始、朝から晩まであいつといたいし、少し前にみたいな赤い夕陽に照らされるあいつの顔を、いつでも見ていたいと思うようになっていた。

 あと身長が凄いよな。俺と同い年なのに、俺より頭ひとつ分? それ以上? 大きくなっていて、驚いた。

 ゴツゴツとした手も、かっこよかった。

 そうだ。かっこいいんだ、あいつは。ビジュアルとか、中身とか。だからついつい見てしまう。


「そういえば霊力の黒色変化ってなんですか」


 隼人とシシノケなんとかって奴が帰ったあと、バーミンガムから出たところで、師匠に聞いてみた。この人は俺や弾の霊能力の師匠をしてくれている。隼人や一郎も。


「霊力は通常赤色だ。君もアーシも。それは分かるね?」

「うっす」

「しかし、隼人くんが見せたように、時折黒色の霊力を持つ人間がいる。そういう場合、先天性の黒色霊力なんだが、隼人くんはもともと赤色霊力だったね」

「黒色に変わったから黒色変化?」

「そうだ。先天性の黒色霊力は例えばサイコパスとかソシオパスの可能性がある人間が持つ悪の波動なんだが……後天的に黒くなった者に見られる兆候としては……」

「としては?」

「愛を欲しているとか……かな」

「愛を?」


 師匠は俺を見ると、間をあけてから言った。


「君は彼を愛してやれるか?」

「いまのあいつ愛に気付かないでしょ」

「それはそうだが……ぼくはテメェの弟子が苦しんでいるのを見るのが嫌なんだなぁ……」

「愛だよ愛」

「不思議なものだね」


 隼人はこれからどうするんだろう。自力で乗り越えられるほど賢くないから、助けてあげたいと思う。でも、受け入れてくれるだろうか。

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