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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ レインコート
63/100

第63話 出てねぇよ

「──どうにかしてくれんのか!」

「ああ」


 喫茶「バーミンガム」で肉ノ家拓也が感動したような声色で抱きついてきた。それを引き剥がして、言葉を付け加える。


「しかし、俺はお手上げだ」

「じゃあどうすんの?」

「そこで師匠だ。彼は俺にいろいろ教えてくれた霊能の師匠だ。千葉元康という」


 師匠は「どーも」と片手をあげた。


「インチキ霊媒師的な雰囲気があるぜ……?」

「アーシは本物だぜぃ」

「彼は本物だぜ」

「そうなの?」


 時折、悠と目が合うのが気になるがそこのところはもう無視でよかろう。


「そういえば、隼人くん。君、霊力が引っ張ってきた生体電気で頭の調子がおかしくなるアレ、どうなった?」

「やってみたほうが早いですよ」

「ならやってみなさい」


 黒い輝きが「ぴかん」という音と共に響き渡って全身に霊力が漲った。


「霊力の黒色変化……」

「なに」

「いや、なんでもない」

「そうか」

「前はちょっと性格が変わって見えたけど、いまは素もどっこいどっこいに荒んでいるから変化がないね。シームレスだ。そんで……君はいまの状態の自分を見たことがあるかい?」

「ない。霊力を纏っただけだ。変化なんぞあるはずがないだろ」

「あるんだなぁ」


 師匠は手鏡を出して、此方に示してきた。その手鏡に映った俺の顔は顎下から目下まで大きな罅が両頬に入っており赤い血肉がのぞいていた。そして、瞳は真っ赤になっている。もともと茶髪じみていた頭髪は黒くなっている。


「なんだコレ」

「無自覚だったんだ」

「痛くねぇの?」

「痛みは無い。が……醜い悪魔に相応しい醜い顔だ。一郎くんもこうなるのか?」

「彼も多分ね。だって彼も生き猿の子孫だろ」

「そうか。そうかぁ……うん。彼にはやらせないようにしよう。彼には似合わん」


 そうしていると、着信音が鳴った。


「一郎くんからだ。出ても?」

「どうぞどうぞ」

「隼人! 今日は何の日か知ってるか!」

「君の誕生日だろ。おめでとう、一郎くん」

「そう! 5月31日は俺の誕生日!」

「憶えてるよ。相棒、君の誕生日なんだから」

「今日寿司らしい」

「君は寿司好きだな」

「あたぼうよ。お前も食えるようになったら食いに行きましょうね〜。んじゃ切るわ! じゃあな! はやく帰ってこいよ!」

「ああ。なるべく早く帰るよ」


 忙しないヤツだ。


「相棒が俺の帰りを希望してる」

「君たちはいつもその調子なのか?」

「そうだが」

「数年すればおめでたい話が聞けそうでよかった」

「なに?」

「そっか。じゃあ気を付けて帰りたまえ」

「肉ノ家くん、君もだ。帰るぞ」


 肉ノ家拓也の首根っこを掴み立ち上がる。


「3P?」

「なに? なんだって?」


 3P?


「なんでもねーっす。誕プレとか買ってくのん?」

「ああ。なにがいいかな……」


 3P?


「あいつゲーム好きじゃん」

「流行りのゲームはあらかた買っているだろうし……」


 3P?


「キスしたら?」

「俺達をなんだと思ってるんだ」


 3P? キス?


「おお。……いいか、肉ノ家くん。俺たちはゲイじゃない。ノンケだ」

「俺は偏見ないぞ」

「俺もない。だがゲイではない。申し訳無いが男は好きになれない」

「好きなタイプは浅丘●リ子だろ。知ってる知ってる」

「明確に言えば『太陽、●を染める時』の浅丘ルリ子だ」

「『俺にさわると●ないぜ』は?」

「それには出てねぇよ」

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