第57話 やる事決まり
翌日の昼休み、まだ覚えている限りの怪異をノートに書いていると、後ろの席の肉ノ家拓也という奴が声をかけてきた。
「滝! あのさ、お前、たしかおばけとかに詳しいんだよな」
「………」
「ならさっ、人に取り憑くレインコートの話とか知ってる!? 人に取り憑いて化け物みたいにしちまうおばけ! なんか知らない!?」
「そんなもん知らんよ。お前、からかってるのか? 俺は忙しいんだ。失せろ」
「そっ……そうだよな〜! マジごめん!」
「…………」
人に取り憑くレインコート。
こめかみを抑えて、頭の中に入り込む。すると、点灯しているパソコンが数えられるだけでざっと50億7000万台ある。その1つのパソコンの前の椅子に座り、キーワードを打ち込む。
「ない」
解けたパソコンならあるかもしれないが……いまはもう分からない。頭が壊れてしまったからだ。
頭の中から出て、息を整えていると、後輩女子達がやってくる。
「花子ちゃんか」
「桜子です」
「……そうか。それで、どうした? まだ解決には至っていないが」
「私の方でも調べてみたんです。私の親戚、昔この中学校に通っていたので、なんかの間違いとかで卒業アルバムにいないかなって思って。そしたら」
「いたか?」
「はい。えっと……北愛子って言うんですけど」
「何年卒業かが問題だ。何年?」
「1975年です」
なら現在は54歳か。
「ババアだな」
「えっ?」
「独り言だ」
「そうですか……」
「北優子だっけか?」
「愛子です。北愛子」
「そうか。紙に書いてくれ。人の名前を覚えるのは……ィ゙ーッ、うん。苦手だ」
「はいっ」
焦げた赤い手帳にその「北愛子」と書かれた紙をノリで貼り付ける。
「一郎くん!」
叫ぶ。
「一郎くんは?」
肉ノ家たくみくんが「一郎なら便所行くってよ」と言った。いや、拓也か。どうでもいいな。
「聞いてない」
「だいぶ大声で言ってたけど」
「ふむ……一郎くん! これからやる事が決まりだ! 北愛子を探すぞ!」
すると遠くから「うるせぇー」と聴こえた。




