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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ わからない生徒
51/100

第51話 崩壊

 2014年(平成26年)1月1日。

 岩手県池首市で住宅1棟が全焼する火事がありました。火元の住宅からは8人の遺体が発見されました。



 ◆


 1月1日。

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「焚き火とバーベキュー! 庭先で!?」


 楽しかった。


 1月2日。

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「焚き火とバーベキュー! 庭先で!?」


 楽しかった。


 1月3日。

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「焚き火とバーベキュー! 庭先で!?」


 楽しかった。


 1月4日

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「焚き火とバーベキュー! 庭先で!?」


 楽しかった。


 楽しかったけど……。


「また……?」


 1月5日

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「焚き火とバーベキュー!」

「また?」

「いつまでもやろうよ!」


 楽しかった。



 1月6日

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「焚き火とバーベキュー! アハハハハ!!」

「はは……ははは……」

「アハハハハ!!」

「アハハハハ!!」

「アハハハハ!!」


 楽しかった。


 1月7日。

 肉の焦げる匂い。

 木がパチパチと言っている匂い。


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


 楽しかった。


 1月8日。

 これ、夢だ。



 2015年。平成27年。


「…………」


 目を覚ました。ひりひり、と。痛みが走る。いつもこの夢を見る。いくら頭がよかろうと、いきなり家が燃えれば人は死ぬ。俺は……助ける順番を間違えたのだろうか。咄嗟に悠を家の外に投げてしまった。死ぬ確率の高い奴から順番を付けてしまった。人の命に優先順位をつけてしまった。祖父母はそもそも老人と、これから生きていても先が短いから、優先順位は低かった。父は警官だったから優先順位は高かった。母ははっきり言ってしまうとあのメンツの中ではたぶん、俺の次くらいには価値がなかった。鳩汰兄ちゃんは優先順位が高かった。一郎くんを掴み、鷹音ちゃんを掴もうとしたところで、火に右目を焼かれたところで怯んでしまった。一郎くんの左目を燃やした挙句……結局、それ以上誰も救えなかった。


「…………」


 やり方を間違えてしまったのだろうか。間違えてしまったんだろうな。間違えたのか。間違えて……守れたものってあったかな。ダメだ。ダメだ。頭がこんがらがる。おばけアーカイブで気を紛らわ……あれ。あれ……。


「あれ……?」


 あれ。あれ。おばけアーカイブない。どこにもない。どこにもない。どこにもない。


「ああ、あああ。ああああ! あああ! うわああああああああああ! ああっ、ひぃーっ! 許して。ン゙っ、ンフコッ、イ゙ィッ。ンンンン。アギィィィ」


 ダメだ。落ち着かないとダメだ。狂っちゃダメだ。そんな資格俺にはない。俺にはないんだよ、隼人。いいか、隼人。お前は、狂っちゃダメだ。お前は、人間であり続けなくちゃダメだ。本当に大事なのは、俺があくまで、俺があくまで化け物で、俺は罪を償うべき罪人だって言うことだ。


「俺はみにくいおばけだ」

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