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第5話 見えない誰か
台所のコンロのところは銀色で、ぼやけ気味ではあるけれど風景が反射する。小学生の弟がやっているバスケの迎えに行ってから、蕎麦を茹でていると、ふと俺の影の後ろにもうひとつ影が重なっているのが見えた。左肩から顔の上半分がひょこっと見える。
「隼人か?」
「どうしたの? 鳩汰兄ちゃん」
隼人は携帯ゲーム機から顔を上げて首を傾げていた。
「隼人じゃないか……」
考えてみれば、隼人は145センチで……俺は250センチだ。椅子を使えば可能だろうが、椅子を動かす音は聞こえなかった。
「じゃあ誰だ?」