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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ 呪縛箱
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第47話 呪縛箱 8

「気付かないわけ無ェだろ。この俺が。……といっても、気付かないのも無理はない。君は頭が悪いからね。気にしなくてもいいぜ。俺以外の人類の9割は頭が悪いからな」


 女が俺を睨みつけた。


「さて、と。まず……お前らのアジトに案内してくれ。娘の……伊藤(いとう)春香(はるか)ちゃんは福井悠が接触してる」

「なんで知ってるの」

「頭を使った。アジトはどこ? 信者をありったけ集めてほしいな」


 八幡平の郊外にアジトはあった。かぐや集会所という名前をしていた。


「うん! 2人欠員がいるけど信者はありったけ集めたらしいな。偉い偉い」

「なんで我々の人数を把握してる!」


 教祖らしき女が叫んだ。


「あんたも俺のこと知ってるだろー。黒申教についても知ってるか? その事もあって、県内にあるカルト宗教についてはある程度調べていて……異理箱の除霊が終わって、『穴埋めの怪異』の話を聞いた時に、動きそうな団体に目星をつけていたんだ」

「そんなの……」

「行き当たりばったりは無い。俺の行動の全てに『不覚』は無いんだ。まず、あんた達は師匠の車に盗聴器を仕掛けていたね。双眼鏡で岩手山を見るふりをして、位置はある程度把握してた。そこで、俺はある程度の情報を師匠の口から引き出させてあげることにした。フェアだ。いわゆるスポーツマンシップだ。そして、俺がおばけ大好きの変人だって言う刷り込みを行った」

「おばけ大好きの変人だろ?」


 一郎くんが言う。


「変人ではないよ。話を戻そう。俺は変人。他2人の『千葉元康の弟子は才覚がある』。そして『悠』と呼ばれた人間は『千葉元康すら嫌煙する』から、厄ネタだと思うだろう。すると、監視が強くなる。それが良かった。監視のグレードを調整させてもらったんだ。ダメ押しで伊藤春香ちゃんとの接触。すると、いま来ていない山本拓也と木田明日美が監視役としての能力が高いことがわかった。んで……」


 あくびが出た。


「つぎに演技を行った。『推理の間違い』という演技だね。フライパンとエッグパンの違いも分からない間抜けだと思うか? 掬投と右ストレートの違いも分からない間抜けだと? そんなわけ無いよな。でもお前らはそんなわけあると思い込む。すると、俺が『穴』だと思い込むと思った。実際思い込んでくれた」


 信者は困惑や怒りといった顔を見せてくれる。高知能の悪いところは……脳足りんが動物に見えるというところだ。そうなると、人間のいろいろな顔というのがわからない。その点、悠は素晴らしい。いろいろな顔を見せてくれる。俺に微笑んでくれたり、美女を見て頬を赤らめるところも素敵。できる事ならくっつきたいが……それは現代において異端だから……やめておこう。


「俺が辺りを見渡しやすい環境になってくれてありがとう。俺を生易しい子供だと思ってくれてありがとう。俺を凡人の規格で評価してくれてありがとう。びっくりするほど、思い通りに操られてくれた」

「あなたは人……? それとも何者……!?」

「俺か? 俺は……人類の味方、おばけの敵。滝隼人……そして最高(ラフ)最強(ラフ)


 集会所の天井が壊れると、粉々になった箱と腕の化け物を背負った師匠が落ちてきた。


「ええっ。みなぶね様がっ」

「貴様っ、みなぶね様になにをっ」

「アーシが殺した。自慢の神様もこれじゃ形無しだな」

「みなぶね様ァっ……みなぶね様ァっ……」

「日本武尊と呪縛箱の合体でしょ」

「それをみなぶね様だと思い込んでるらしいね。哀しいコ……信仰する対象を妥協したときから宗教はただのクラブ活動だよ」


 師匠はそう言ってこの騒動を締めくくった。

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