第41話 呪縛箱 2
それからしばらく話をして、シラキさんが「そろそろ行くか」と言ったので、俺たちは玄関までふたりを見送ることにした。外は寒かった。
「此処までは何で来たんですか」
「駅から徒歩だね」
「寒いでしょ。師匠、送って行ったらどうです?」
「嫌だよ。アーシはタクシーの運転手じゃあないからね。タクシーを呼ぶことは出来るが」
師匠が携帯電話を出したその時だった。
突如、岩手山のある方から、不思議な妖気が漂ってきた。妖しさは満点で、師匠も、虚偽校のふたりも、咄嗟に身構えた。俺はわけもわからずといったふうに、とりあえず身構えた。
「なにかが目を覚ましたらしい」
「なにかってなんですか」
俺が慌てて質問すると、師匠が「おそらく神だな」と言った。
「神? またなんかのあれですか」
「違う。あそこには今はいるんだ。日本武尊が……!」
「しかも邪ななにかとくっついてる……」
「霊力が箱の形をしてます」
「それってあれじゃないですか」
異理箱を祓ったが故に出来た隙間を埋めるために生み出される穴埋め。確か形は箱だとか言っていたような気がするが。
「合体したんじゃないんですか」
シラキさんが言った。
「おばけって合体するんですか?」
「エクストラムマンも合体できるんですよ」
「エクストラムマンも合体できるんですか!?」
「エクストラムマンは人型の怪異とは大抵合体できるよ」
「なんだその機能……俺はそれになろうという運命なんですか……?」
俺たちは岩手山に向かってみることにした。此処から岩手山までは車で1時間程度。
「感じるかい、滝くん」
師匠が回す車の中で岩手山の方に双眼鏡を向けていると、シラキさんが尋ねてきた。
「霊力が大きすぎるとこうやって離れたところからもオーラを視認することが出来る」
「はいっ。感じます。感じますっ。呪縛箱のオーラも……日本武尊のオーラも……! いいなぁ、いいなぁ、とってもいいなぁ、こんな世界に来られて良かった。素晴らしいっ! 呪縛箱……! めっちゃ最高だ!」




