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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ 呪縛箱
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第39話 兄について

 ある日の夕方。鳩汰お兄ちゃんとパパは仕事、ママは悠さんのお母さんに会いに行っていて、寂しいから、100万ドルほしさに隼人お兄ちゃんとバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想について話し合っていると、突如、「てんてん」という女の声がした。


「おばけ! お兄ちゃんおばけ!」

「そうだね。おばけかもしれない」


 兄は「でも人間かもしれないね」と言って、私の頭を撫でると、懐中電灯を台所の棚の中から取ると、外に行ってしまった。2分ほど経った頃だろうか。兄は戻ってくると、「おばけだった」と言った。


「どゆなおばけ?」

「お? 鷹音ちゃんもとうとうおばけに興味が?」

「ないけど、ないけどさ。一応聞いてみたくって」


 私は生きた人間にしか興味がなかった。生きた人間が持つ特定の情報と痕跡の二重螺旋が好きだ。よく見て、その人となりを知る。それが好きだ。脳みその容量の8割を人間観察の為に情報庫にしている。鳩汰お兄ちゃんも隼人お兄ちゃんも私もそうしないと、「通常の人間の脳みそ」と同スペックにはなれないと悟っているからだ。それでも、私たちはそれですら人間より優れた脳みそを持ってしまう。昔私たちは私たちのルーツが気になったことがあった。父は賢い警察。数多くの難事件を脳のシュミレーションだけで解決していた。隼人お兄ちゃんと同スペック。母は……これは憶測だけど、触れないほうがいい。経歴はおそらく一度消している。そういう痕跡だ。鳩汰お兄ちゃんは気付いているだろうが隼人お兄ちゃんは観察眼に欠けているから恐らく気づいていない。たぶん気付いたら少し荒れるかもしれない。隼人お兄ちゃんは兄妹の中で一番バカだ。弾さんは「それの7割をおばけに使ってるならむしろバカだろ」と言っていたが私もそう思う。隼人お兄ちゃんはバカだ。でも、それを埋めるくらいの優しさがある。隼人お兄ちゃんは愛に生きるし平和を愛するし人類の自由の為に怒る事が出来る。


「あれは『てんてんさん』だ。はじめて目撃されたのは山形県。岩手に来たのはいつだったかな。とりあえず今日は部屋に戻っていよう。最近サイトを作ったんだ。鷹音ちゃんに採点お願いしたいな」

「いいけど」


 察するに。


 人間だったのだろう。だってもし本当におばけだったら兄は勃起しているはずだし。つまらなそうな顔をしていたし。


「お兄ちゃんセンスないからね」

「はは、言ったな」

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