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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ 呪縛箱
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第38話 修行

 師匠に山奥に連れて行かれた。そこは生き猿の伝説のある山だった。山を下りればすぐ近くには萩野優子さんが亡くなられた場所がある。師匠と俺は大勢の真っ黒い猿に見守られながら、小屋のところまでやってきていた。その小屋には4つ古ぼけたお札が貼られていた。その小屋に入ると──人間の死体がある。


「通報、すか?」

「違う。これは黒申教にいたある男だ。死因もアーシではない。ではなにか。この死骸は特別な霊力によって発見当時のままにしてある。さぁ、推理してみよう」

「なぜ?」

「怪異に遭遇した際、ラハナー値を的確に推測するため。さてはじめ!」


 俺は戸惑いながらもその禿頭男の死骸に向かう。


「…………えっと……まず、蛆が湧いています。この大きさだから、死後11時間ほど……。男は全頭型脱毛症を紛らわせるために髪を剃る習慣があります。手にはバリカンを持った癖がついていて……歴の浅い後天的な外反母趾があるから数時間単位で動くことのない立ち仕事で、あまり硬いものが食べられなくて普段は柔らかい粥を食べていて……右腕がわずかに発達しているから、右利き。眉間の銃創から小口径の銃で殺害されたことがわかります。おそらく……犯人は左利きで、身長は140から150の間。性別は女性と推測します。首に損傷があるから犯人はこの男と激しく揉み合いになった結果に殺害」

「ラハナー値は?」

「1500あたりですか」

「不正解。1508クリソンだ」

「ほぼ正解じゃないですか」

「ほぼ正解じゃダメだ。言ったろ。正確に同じ波形の力をぶつけなければ除霊は敵わない。明日別の死骸を用意するからまたやるぞ」


 こういう修行が1週間続いた。人間の死骸を見続けていた為か、心が震えるようになってしまった。そういうこともあるから、師匠はこの修行が終わると色々なところへ連れて行ってくれた。怪談収集にも付き合ってくれた。やはり、師匠はクソ野郎だが……本質というのは、世話焼きの気のいい人に思えた。

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