第30話 決して
まさかの力技を見せられた後に、なにかずうんと腹の底に響くような音が聞こえた。
「聞こえたかい。これが呪縛の穴埋めだ。この世の何処かに怪異が生み出されたぞ」
「どうしましょう。その怪異というのは、どこにあ?んでしょう」
「大抵は呪縛に隙を生じさせた原因から程遠くないところにある。池首市か奥州・平泉・一関・陸前高田・住田だ」
「これから探すんですか」
「そういうことになる。しかし今日ではない。なので今日は今のところ解散となる。君も非常に気を付けて生活したまえ。もし怪異をみつけてもひとりでどうにかしよう等とは考えず、アーシに連絡しなさい」
「うん。わかりました」
「よし」
頭を撫でられた。
「子供じゃないです。やめてください」
「子供だよ。はちゃめちゃに子供だ」
「だとしても……」
「不満かい」
「そりゃあ……いい思いはしないですよ」
「なら悪いね。ぼくの師匠からの教えだ」
また「ぼく」だ。
「なんていう教えですか」
「聡い子には褒美を」
「へー……」
ともかく。
「俺、頭撫でられるの嫌なのでやめてください」
「悪かったね」
「悪いですよ」
おばけがどこかに現れた。これから必ず押し寄せてくる。師匠は「ひとりでどうにかしようとするな」と……そうは言うけれど、俺も人類の味方として……。どうにかしないと……いけないよな。それに、例えばの話だが、そのおばけが悠に手を出したとしたら。多分、抑えが利かなくなるだろうし。
「その時はその時ですね」
「……? その発言の意図は……? 訴えるとか通報するとかそういう話をしてる?」
「してないですよ。なんですか」




