第25話 物売り市 1
池首市は岩手県の県南にあって、隣接する市は奥州・平泉・一関・陸前高田・住田の5つ。昔はよく人身の売買があり、忌々しい習わしの贄の出し方に池に沈めるというものがあり、その習わしが終わったあとにも処刑の方法としてその贄の方法が使われたので、その池から飛び出した頭がつねに見えていたことから「池首」と名付けられたらしい。また、池首市は市として成り立つ前は、隣接する区域や宮城からの商人を受け入れて、物売りの市のある日には街はとても賑わったのだという。その賑わいは平成25年になった今も残っており、物売り市という日がある。池首駅通り商店街やそこに隣接する池首公園でバザーが開かれる。
「隼人くん! 一郎くん! 弾くん! 悠くん! アーシいまから便所に行ってくるから盗まれないようにちゃんと見張っていてくれよ!」
師匠はそう言って、バタバタと便所に向かっていってしまった。頻尿だなぁ、と思いながら見送る。
「お前の師匠さんさ、頻尿の癖に喉の渇きが頻繁に訪れるよな」
「糖尿病か?」
「ううむ……」
「真冬日だからじゃねぇ?」
「あー。冬っておしっこ近くなるよな」
「そうかなぁ」
「悠、寒くないかい?」
「おう!」
悠は厚手のパーカーに厚手のコート、それとふかふかのマフラーを被っていた。鼻の先はほんのりと赤くて、頬も赤くなっている。
「でも手がつめたいな」
「俺が温めるよ……」
「カイロあるから大丈夫だぜ」
「そっか」
少し、がっかりした。




