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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ 爛れたタイムレター
16/100

第16話 追え! 1

 息子が友達の家に入るという電話を貰って、お風呂につかる。友達というのは、「隼人」という男の子で、オカルトというかホラーが好きな変わった子だけれど、表向きはとても穏和な子で、ご両親も活発ながらとても善良な人達だから、信頼は出来る。


「隼人くんなぁ……」


 あの子はちょっと変な方向で肝が据わっている。去年、隼人くんをつれて旅行に行ったのだが、吹雪で道に迷ったことがある。私たちが混乱している中で、あの子だけは「風向き」と「轍」と「木の角度」という意味のわからない根拠から、安全な帰り道を導き出した。隼人くんは昔からこういうところのある子どもだった。最初は不気味だと思っていた。夫がその時のことを詰めると、隼人くんは「悠の前でかっこつけました」と白状した。困惑している息子をみかねて、頑張って帰り道を導き出したのだという。


「他人と違う恋模様なのかねー」


 そんな事を考えていると、洗面所の洗濯機の上においていた携帯が着信音を鳴らした。一度風呂場から出て、その電話に出る。


「もしもし」

「あー、久しぶり。俺だよ俺。宮田(みやた)勇気(ゆうき)だよ。俺今さ、岩手に帰ってきたから、久しぶりに中学時代の奴らで会わね? 忠敬(ただゆき)って今週末平気か?」

「いいよー」


 私の夫は中学時代の同級生だった。


「それじゃあ土曜日になー、駅前でなー。ここでひっさつ」

「え?」

「きみなやいきなやしなずがやはしらせはしらせひんのこやきびたてゆうらぎてんめんそうかくやさくなや しんめいせいとうけいはくなきあかんこう」


 その瞬間、風呂場の戸がガラッと開いた。驚いて振り返ると、ぶよぶよふとった腕が湯船から伸びて、私の頭を掴んだ!







「──隼人くんっ! 君、なにか知らない!?」


 悠のお母さん──おばさんはそう言って、俺に掴みかかった。うおおん、力が強い……。


「気が動転して……おかしな記憶を改竄した、という可能性も考慮したほうがいいと思うよ、おばさん」

「あれはおばけ! ぜってーおばけ!」


 力説と来た。


「うーむ……不謹慎な話だから、あまりしたくはないんですが、いま聞いた話の中で気になるところがあるとするなら、宮田勇気という人が言ったへんな呪文みたいな奴だよ。それも全く同じ事を、20年前に自ら命を絶ってしまった『萩野優子』という当時14歳の女子中学生が個人ブログの日記に投稿しているんです」

「じゃあ、その子の幽霊だっ」


 早計だと思う。


「でも、なんか違う気がする。……俺はあくまで物好き程度の知識……いわゆるおたくってだけたから、専門家じゃないと……」

「おばけの専門家って?」

「怪しい人だし人類の敵だけど……紹介したい人がいます」


 俺は師匠を呼んだ。


「ふーむ! 賢いっ! さすがアーシの弟子と来た! どうも御婦人! どうも夫君! アーシの名前は千葉元康。怪異の味方、人類の敵。しかして怪異を祓う祓い屋をやらせてもらってます」

「怪しさ満載ね……」

「よく言われます! これだから人間は……」


 割愛。師匠は「これは我々のまだ知らない何か大きな力が関わっているのだ」と言う。その大きな力とは、なんなのか! という話なのだが……。


「ウム! わかんない!」

「師匠!」

「師匠万能説はやめたまえ。君は全知全能か?」

「はい」

「自己愛が強い……!」


 それはこれから調べていくのだ! と、師匠は腕を突き上げて言った。


「こうなると子供の出る幕がないね」

「ありますよ」

「ほう?」

「やっぱりないかもしれないけど。俺の出る幕は少なからずあります」

「たとえば?」

「おばけの知識!」

「フーム……」

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