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空想怪奇ラフ  作者: 蟹谷梅次
空想怪奇ラフ 爛れたタイムレター
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第13話 俺じゃないのか

 家族や友達のお見舞いがいなくなって静かな時間が流れ始めた。両腕が使えない状態なので、何かをしたくても何も出来ない、という状態である。とても面つまらない……。次は折られないようにしよう。そんな事を考えながら夜中眠っているとカラカラカラという音がした。こんな時間にキャスターの音。イルリガードル台の音かな……? 夜中に尿意で目覚めた患者のトイレとか……? などと、そんな事を考えてみる。その間にもカラカラカラという音は此方に近づいている。便所は俺のいる病室のすぐ近く。


 音が止む。


 この病室の前で。


「おっと……?」


 雲行きが怪しい、と感じた。人であった場合は……この病院はドアの前に鍵があるから、何ら心配は無さそうに思うけれど、お化けだった場合はそんなもん関係ないと思う。多分。カラカラカラ……という音は徐々に此方に近づいてくる。


 おばけだ!


「………」


 キャスターの転がる音は、どんどんとこちらに近づいている。俺は狸寝入りを決め込んで、不審な音が俺に接触してくるのを待った。


「お前じゃない」


 おばけだ! これはおばけだ!


「お前でもない」


 声は此方に近づいてきている。俺は端的に言えばめちゃくちゃ興奮していた。


「お前でもない」


 俺かもしれない。体が熱くなるのを感じていると、しばらく静寂が訪れた。


「騙されない……騙されない……狸寝入りには騙されない……」


 来たか!! と思い、瞼を開けてみる。おばけの姿はなかった。


「あれは、おまえだ」

「ギャアアアアアアアアアアアア!」


 隣のベッドから叫び声が聞こえてきた。カラカラカラ……という音は遠ざかっていく。


「俺じゃないのか……」


 起き上がって、なんとか隣を見てみた。隣にいた男の子は泡を吹いて倒れていた。


「これはこれは」


 ナースコールで「隣の男の子がいきなり叫んで気を失った」と伝えると、すぐに、看護師がやってきた。


 いろいろあって、退院するまでその間そいつはやたらと夜中俺に話しかけてきていた。

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