第12話 あなたはクロギですか
師匠曰く、人間は怪異を生み出す意志の力があるから、それを殺傷手段に転用できる──のだとか。それってもしかしなくても正しいことではないよなぁ、と思いながら師匠の家からの帰り道を歩いていると、墓場のフェンスに何かが、引っ掛かっているのが見えた。それはズルズル……とこちら側に落ちてきているようで、立ち止まってそれを見る。その墓場の「なにか」があるのは、坂道の急勾配のところで、視線を移して、「なにか」の下にある壁面には、すぐ最近に出来たようなシミや何かの塊がある。ズルズル……とそれは此方に近づいてきているようだった。それと同時に液体がその「なにか」からこぼれ落ちている。頭の中にある「おばけアーカイブ」にて、「墓場 フェンス おちてくる」と検索をかけてみたが、恐らく関係ないおばけしかヒットしない。
「うぅん……?」
ぞくぞくする。おそろしい。とても恐ろしい。逃げてしまいたい! ……だけど、俺にはそれができなかった。たぶん俺でなくとも。単純な話、身体が動かなくなっていた。恐らく足を止めた時から動かない。しかし焦っちゃだめだ。きっと、なんらかの解決方法があるはずだ!
「……ギ……ですか」
「……?」
「あな……ギ……ですか……」
何かを言っている?
「なにか」がブツブツと言っているのは、察するに「あなたは??ギ??ですか」というもののようだった。
「あなたは……クロギ……ですか」
この質問に答えればいいのか? 質問をしてくるおばけには2タイプいる。「質問に返さないと殺してくるタイプ」……「返答次第では殺してくるタイプ」だ。
「違います……」
「う……そ……つ……き……だ……」
「クロギじゃないです……」
俺の両腕がミシミシと鳴って、皮膚が張り裂けて骨が砕けた。
「ギャアアア」
そこでようやく動けるようになった。答え方を間違えちゃったんだ! 両腕を折られた! 腕をやられた! 腕をやられた!
「しっ……知りたいなぁっ……」
俺はいま最高な怪異を見つけたんだ! ハハ……ハハ……! 知りたいなぁ、俺、君のこと知りたいなぁ……!
「あっ! おばけ消えちゃった!」
その後……。たまたま通りかかった御婦人に救急車を呼んでもらい、俺は病院に入ることになった。