第11話 師匠
鳩汰兄ちゃんの職場の同僚であるという千葉元康という男の人は俺のおばけの知識を聞くと、とても感心してくれた。
「その知識は素晴らしい! 君は選ばれし人間だ! アーシは君のその知識に尊敬を払っちゃうことになるわけだが……なにも一方的な施しではいけないわけだ。こうしよう、君にある知恵を授ける。知識と知恵を掛け合わせて使うのは君。使い方は君次第」
そう前置きをして、千葉元康さんは語り出す。
「君が『おばけ』と呼んでいる物は、我々祓い屋が言うところの『怪異』という。幽霊や妖怪、UMAを総じてそう呼ぶ。怪異はもとは人間の残留思念のようなもので、例えばそこで不特定多数の誰かが同じことを思うと、そこに意思が残る。するとそれは怪異にとって『骨組み』になる。そこに人々の悪感情がうまい具合に肉付けされて、怪異になる」
「なるほどです。ちなみに、あなたはその知恵をどう使ってるんですか」
「アーシかい」
その目には闇がでらでらと輝いていた。
「ちなみにね、アーシは……人類を挟まずに怪異が生まれる世界が理想だと思っているよ」
「どういうことですか」
「人間が嫌いだなーって。人間はいつも破壊ばかりする。だから、人間81億1900万人と怪異10億体の数の大きさを入れ替えるっ!」
「へー……なんか凄いですね。でも、人間は破壊をするが……それと同じくらい何かを想像していますよ。俺はおばけというものを作ってくれた人間が好きです」
「見事に意見が割れたね!」
彼は笑った。
「使い方は君次第。それで構わない! アーシにはアーシの使い方があるし君には君の使い方がある。それが大自然だね」
「思想にしては寛容すぎる……」