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第1話 ピグさん
インスタントコーヒーの粉をカップに入れて湯を注ぎ、電気ヒーターのスイッチを押して、椅子に座る。家族共用のパソコンでインターネットサーフィンやSNSをしていると、ふと尿意を催した。ので、トイレに立つと飼い猫がトコトコついてきていた。かわいいなあ、と思ってそれを見ていると、飼い猫の後ろを何かの塊がついて待っていた。それは真っ黒な芋虫のようなもので、脚は4つあり、背中には目がひとつあり、その目がまばたきをする度に「ピグピグ」と鳴いていた。不思議だったが、トイレから出ると、その不思議な生物は消えていた。バスケの習い事から帰ってきたオカルト大好きな兄の隼人に尋ねてみた。
「それは『ピグさん』だね」
「ピグさん?」
「うん。もとは赤ちゃんのおばけなんだ。生まれることなく死んじゃったおばけだね。いいかい、鷹音ちゃん。おばけは怖がるだけじゃいけないんだ。おばけは、時には敬ったりすることが必要なんだ」