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ウソつきな朝

「では、行ってくる」

「はい。リラ様は……その……お呼びしましょうか?」

「いい。そっとしておいてやれ。リラに嫌われたくない」


 見送りに来た執事が心配気に言う。

 翌朝には、ブラッド殿下たちと一緒に騎士団へと向かうことになった。玄関外に出れば、すでに馬が準備されている。庭には、ブラッド殿下の配置した騎士団がフェアラート公爵邸を固めている。


 彼らは、ブラッド殿下直属の部下だと言われている。戦場でも前線に出て、生きて帰って来た者たちばかりだ。


 そして、そのままブラッド殿下が昨夜滞在したフェアラート公爵領の宿へと行くと、彼は気だるそうに部屋の扉を開けた。

 上半身裸の姿のブラッド殿下が、髪も整えずに開いた扉にもたれた。明らかに、伽のあとだろう。


「ジェイドは、早起きだな」

「少しでも早く帰りたくて……」


 リラが心配で、早く行って帰りたい。


 部屋のベッドには、一人分の盛り上がりがある。女性を呼んで、そのまま朝を迎えたのだろう。ベッドのそばには、脱いだドレスがそのまま落ちている。


「仕方ないな……支度をするから、今のうちに朝食を準備させてくれるか? 二人分のサンドウィッチでいいよ」

「は! すぐにご用意いたします」

「それと、あまり女性を見るものではないよ」

「そんなことしてません。俺は、リラだけですから」

「そう。くく……ジェイドは真面目だな。だが、あまり思いつめないようにしてくれ」

「そうします」


 笑いながら、ブラッド殿下が扉を閉めた。彼は、戦時から女性を呼ぶような殿下だった。

 でも、特定の女性はいない。殿下でありながら、彼は婚約者もいないのだ。





「ふふ……ジェイドは真面目だねぇ」

「あまり、からかわないでください。こんな姿を見られたら、と思うと冷や汗が出ますわ」

「見せつけるのも、一興だと思うけど?」

「意地悪ですね」

「そうかな? これでも、俺も怒ってはいるんだけど?」


 ベッドの上で、一糸まとわぬ姿の女がシーツに包まり隠れている。女の頭からゆっくりとシーツをまくると、照れた表情の女が自分を見た。


「俺は、意外と嫉妬深いようだ」

「初めて知りましたよ」

「そう? 呼び出された時は嬉しかったのだが」


 その彼女に愛おしそうに額に口付けを落とす。


「早く一緒になりたいよ」

「私もです……」


 もうすぐで邪魔者が消える。一人一人と……。そうして、彼女を自分だけのものにする。

 目が合えば、惹かれあう様に唇が重なった。







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