77.海岸洞窟
俺たちは冒険者として、サハギン討伐依頼を受けた。
やってきたのは街からほど近い海岸の、崖。
崖には洞窟の入り口があった。海蝕洞ってやつだな。
「この中にサハギンがいるのですか?」
「らしいな」
魂感知を使ったところ、なかには複数の魔物の魂があるのがわかった。
だが。
「中にいるのは魔物だけじゃないみたいだがな」
「人ですか? 魔物が人間を攫う的な?」
「その可能性もあるが、俺はそうじゃないと思う」
「ほえほえ?」
なにがほえほえだ。
くそ、かわいいじゃねえか。くそが!
「ダーリン怒ってる?」
「ああ。人前でほえほえとかいうな」
「可愛くないですか?」
「かわいいから言うなって言ってんだよ。目立つだろうが」
んふー♡とアホエルフが満足そうに鼻を鳴らす。なんなんだよ。
「ダーリンは独占欲が強くて、困るなぁ〜♡」
アホはほっといてさっさと洞窟の中に入る。
「単に目立つからやめろってだけの話だ。別に独占欲とかそういうんじゃない」
「はいはい、わかってますよぅ〜♡」
本当にわかってるのかこいつ……。
「ギョギョ!」「ギャギャ!」「ギャギー!」
海の中からサハギンが3匹、顔を出してきた。
「敵ですね。どうします?」
「おまえが出るまでもない」
俺は銃口を海に向け、レールガンを放つ。
「「「ギャーーーーース!」」」
あほ魚どもは一瞬で感電死した。
「ありゃあ、1発で死んじゃいましたね。さすがだーりん! お強い! よっ、最強! 無敵! かっこいー! 素敵ー! きゃー!」
うぜえ。
「なんだよそれは」
「最近ダーリンのこと褒めてなかったから」
こないだ、村人を助けるとき、このアホは同行してなかった。
いつも口を開けば俺を褒めてくるアホがいなかったので、ちょっと物足りなさは感じていたのだ。
「だから今回はたくさん褒めようと思いまして〜! すごいぜダーリン! かっこいいぞダーリン!」
く、くそ。恥ずい。めちゃくちゃ恥ずかしい!
誰かに聞かれてるわけじゃないんだが!
「やめろそれ」
「すごいすごい!」
「その口を今すぐ閉じろ」
「ん〜♡」
あほが口をタコみたいにしてきやがった。
「アホエルフの余計なことをいう口を、ダーリンの口で塞いでほしいなぁ〜♡」
アホがアホなこと言ってきてた。
ほんとアホだなこいつ。
そんなアホの余計なことをいう口を、塞いでやった。
勘違いしないでほしい。これはいちゃついてるとかじゃなくて、単にこいつがうるせえからやってるだけだ。




