76.海へ
サブリーナの街へとやってきた俺たち。
場所は、街からほど近い海岸。
「海だー!」
夜。エリスが海を見ながら大声を上げる。
俺はぺんと頭を叩く。
「でけえ声出すんじゃねえ」
魔物が反応して、こいつに襲ってきたらどうするんだっつの。
ったく。
「ぬふふ、えへへ♡ダーリンから伝わる愛〜。ああん、待ってぇ」
俺は海岸を歩いていく。
後ろからついてくるエリスが、尋ねてきた。
「ダーリン。依頼って結局なんだったの?」
「冒険者としての、依頼だ。討伐依頼」
「ほーん? 討伐? 何を?」
「サハギンだとよ」
サハギン。
魚人ともいう。二足歩行するでかい魚の亜人間だ。
「なんでも、海岸にサハギンどもが巣を作ってるらしい。んで、船を襲われて困ってるんだとよ」
「? サハギンなんてダーリンが出る幕じゃなくない? 他の冒険者に任せればいいのに」
まあ、それはそうなんだが。
「連中どうやら、ただのサハギンじゃないらしい。並の冒険者でも勝てないんだとよ。だから、金獅子と俺に頼みたいんだとさ」
「ふーん、ただのサハギンじゃない……どんなの?」
「さぁな。ただ、Aラン冒険者でも負けちまったらしい」
「ふーん。ふーん、ふふふふふ♡」
アホがアホづらさらしながら、笑ってやがる。
「断らないんだー?」
「まあな」
「やっさしー!」
「うるせえ。金が欲しいんだよ。金のためだ。別に困ってる奴のためじゃねえからな」
まあ確かに別に旅の資金に困ってるわけじゃない。
まあ、でもほら、あれだ。金はいくらあっても困らないからな。
「ぬふふ、素直ではないですなぁ。でもそんなダーリンもちゅき♡」




