75.厄介事
俺たちは【サブリーナ】という街へやってきた。
ここに勇者がいる、とあの村の連中が言っていたからだ。
が。
ざっと街を見て回ったが勇者は見当たらなかった。
「いなかったねー」
俺、エリス、シロの三人は宿に泊まることにした。
まあ別に賢者の小屋を使えば、宿なんて要らないのだが。しかし異空間に移動してるところを見られたら面倒だった。仕方なく、宿に金を落とすことにした。
「どうしてだろ? 勇者って悪い連中なんでしょう? この街でも悪さしてるモノだと思ったんだけども」
「…………」
確かに妙ではあった。この街の連中、誰も勇者について知らなかった。
「もう村を後にしたのかな?」
「かもな。まあそれならそれでいいや。明日には街を出ればよ」
ベッドに座っている俺の隣に、エリスがやってくる。
「ダーリン♡ おめぐみを~♡ あいたっ」
エリスが抱きついてキスしようとしたので、額をはたいた。
「駄目だ」
「なんで~?」
ベッドの上ではシロが寝息を立てていた。
ここは二人部屋だ(三人部屋がなかった)。こんなとこでおっぱじめたら、寝てるシロを起こしてしまう。
「ちょっと疲れてるんだよ。今日ぐらいはゆっくり寝かせろ。毎晩毎晩アホみたいに求めて来やがって」
「んふ~♡」
エリスがあほ面(※笑顔)を浮かべてくる。
「寝てる子供を起こさないように気を遣ってる、ダーリンはやっぱり優しい人ですよぅ! そんなダーリンが……ちゅき♡」
……どうしてこのアホは、俺の考えてることがわかるんだろうか。なぞだ。
と、そのときである。
『おまえ様よ。客が来るぞ』
……魂を感知した妖刀が、俺に告げてくる。
嫌な予感しかしない。
俺はシロを起こさないように静かに立ち上がる。
「ダーリン?」
「おまえはここに居ろ」
俺は扉を開ける。
するとそこには、ぽかんとした顔の男が立っていた。
ドアをノックしようとして、その前に俺がドアを開けたら驚いてるんだろう。
「なんだ?」
「し、失礼しました。孤高の金獅子様とそのお連れ様とお見受けいたしますが……」
あーあーあー。
面倒事だよこれはよ。どう見ても、私困ってますよ闘気が、目の前のやつから漂ってくるよ。ったく……。
「外で、用件を言え。子供が寝てるんだ」
「話を聞いてくださるのですかっ!」
「聞くだけだ。受けるとは言ってない」
そう、話を聞いてやるだけだ。
『どうせ話を受けるのだろう?』
うるせえ妖刀だ。ったく。




