73.さらば村人
呪物を食らい、新たなる能力を獲得した。
じゃあもう用済みだ。帰るか。
俺が歩き出すと村長が呼び止めてきた。
「お待ちくだされ勇者様!」
「……俺は勇者じゃない。二度と間違えるな」
あのくそったれクラスメイトどもと同列に扱われ、俺は若干いらついていた。
背後の村長が少し息をのむのがわかった。……やりすぎちまったな。そこまで怒鳴りつけるきはなかったんだが。
「しろ知ってるよ。お兄ちゃん、勇者にひどいことされたのっ。だから、同じ扱いされるの嫌なだけなのっ!」
……シロがなんだか釈明してる。別にそんなことしなくていいっつーの。
こいつらに好かれる気はサラサラないのだが。
「それは大変失礼しました。では、なんとお呼びすれば?」
「名前を聞いてどうする?」
「この村の子々孫々にまで、あなた様の偉業を言い伝えとして残そうと……」
俺は無視して立ち去る。
「お待ちを!」
「待たねえよ。いくぞ、シロ」
「うん!」
ぼんっ、とシロがフェンリル姿へと戻る。
俺はその背中にひらりと乗っかる。
「あ、あの! お礼を!」
「いらん、くどい。俺は別に金もアイテムもいらん。情報があるなら別だが」
「情報?」
「ああ。くそ勇者どもを探してる」
すると村長が言う。
「それなら、ここから少し北西に行った先に街があります。そこに勇者様……いや、勇者がいると聞いたことがあります」
……勇者がいる、だと。
そいつが木曽川かどうかはわからないが、勇者なら何か女神に関する情報を持ってるかも知れない。
「情報ありがとな」
「あ、あの……情報以外にもお渡しできるものが……」
「んなもん、いらねえよ」
貧乏人から金を取るほど人間終わってねえ。
シロが走り出す。
「ありがとうございます! フェンリルの主様!」
……どうやら名乗らなかったせいで、フェンリルの主扱になってる。
勘違いしてるんじゃねえよ。シロは家族だ。主従じゃないっつの。
……まあ、訂正すると面倒だし、さっさと帰ることにする。
「ありがとうございました~!」
背後で村人たちが俺たちに手を振っているのがチラッと見えた。が、別に無視して前を向く。
『良かったねお兄ちゃんのファンが、お姉ちゃん以外にもふえたよ!』
アホエルフが相手なら耳の一つでもつまむところだが、子供を痛め付ける趣味はないので、聞こえなかったふりしたのだった。




