71.勇者の悪行
村長、そして村人達全員の呪いを解除した。
改めてだが、【無】の力はすげえな。ほぼノーリスクで、どんなもんも無かったことにできるからな。
「旅人様……どうもありがとうございました。本当に、助かりました」
村長が俺に頭を深々と下げてくる。ちっ……。
「頭なんて下げてほしくて、やったんじゃねえ」
「では……お金が目的ですか?」
「こんな貧乏そうな村から金なんて取れるかよ」
「で、ではどうすれば……? あなたには大変お世話になりました。なにかお礼をさせてくださいまし」
つっても別に、自己満足で助けただけだしな。
お礼が欲しいとは思わん。
『おまえ様よ。呪詛の気配がまだ消えていないぞ』
……なんだと?
『おそらく村人たちに呪いをばらまいていた呪物が、この近くにある。村長の家から、その気配を強く感じるな』
なるほど。呪物に一番近い場所にいるから、村長のやつは、一番被害が酷かったのか。
「おい村長。おまえの家になんか、古い道具みたいなものないか?」
「は、はいっ。あります……けど……」
何で知ってるんだおまえみたいな顔をされた。説明はめんどくさいからしない。
「よし。それをよこせ」
「は、はい! どうぞっ!」
俺が命の恩人だからか、素直に村長宅へと案内してくれた。
村長宅の神棚には、1つの木箱が置いてあった。
『これが呪物だな。元々は封印がされていたみたいだが、外的要因によって封印が解かれ、呪いが外に拡散されたんだろう』
外的要因?
呪いの封印ってそんな簡単に外から壊せるものか?
『無理だな。おそらく……まあ、強い力を使うものが壊したのだろう。それこそ……勇者とかな』
……ほんと、勇者ってカスしかいねえんだな。
「前にここに、勇者とかこなかったか?」
「は、はい。来ました。この村は呪われてる、おれが呪いを解いてやるって……」
「そいつの名前は?」
「えと……たしか、キソガワ様とおっしゃってました」
……木曽川。あのクソ野郎。こんなとこにまで来ていたのか。




