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64.これから



 シロと地竜を回収し、俺は街を出た。

 やれやれ、目立っちまったよ……。


 俺は念のため、呪物で顔を変えておいた。

 さっきの街ではずいぶんと目立っちまったからな。


「むぅ、ダーリン。その顔……あんまり好きじゃないですっ」


 御者台にて。

 隣に座り、手綱を握っているエリスが、ぷくっと頬をくらませる。


「いつものダーリンの顔がいいですっ!」

「おまえの好みなんて聞いてねえ」

「ダーリン顔変えてほしいですっ! チェンジを要求します!」

「話を聞けあほ……」


 どうにもこのあほは、俺たちの置かれてる状況を理解していない様子だ。

 俺たちは(まあ主に俺だけだが)勇者軍のお尋ね者なのだからな。


「あ、あの……お兄ちゃん……?」


 ひょこっ、とシロが後ろの荷台から顔を出す。


「しろ、御者やるよ?」

「あ? すっこんでろ」

「でも……」

「邪魔だ。おとなしくしてろ」


 シロは千曲川に操られていた。

 無理矢理精神操作されていた影響か、かなり疲弊していた。

 だから休ませているのだ。


「シロ。ダーリンはこう言いたいのです。疲れてるのでしょう。ゆっくりお休みなさいって」

「そ、そうなのっ?」


 あほエルフが言ったことを聞いて、シロが目を輝かせる。

 ちっ……。


 あほめ。余計なこと言いやがって。


「違えよ。ただ、大事な場面でへましないように、休養取っておけって、そういう意味だ」

「なるほどっ。わかったっ。しろ、お兄ちゃんのいうとおり、きゅーよーとるっ」


 シロがコロンとその場で横になる。よし。素直な子だ。


 ……そして、そんな俺の様子を、ニコニコしながら、あほエルフが見ている。


「んだよ」

「いやぁ、ダーリンは、あれだなぁ。やさしいなぁ~。ふぁ? ふぁにぃ~?」


 腹立ったので、指でエルフのほっぺを引っ張ってやった。

 しかしこいつ、これで喜んでいた。なんなんだこいつ……。


 ぱっ、と手を離す。


「うぇへへ♡ ダーリンに雑に扱われるのも、乙ですな」

「はいはい」

「ところでー……ダーリン。これからどうするの?」


 急に真面目になったな。

 まあいいが。


「神聖皇国を目指す」

「場所わかってるの?」

「ああ。ジョン・スミスの知識の中にこの世界の地図と、皇国の地図が入っていたからな」


 神聖皇国へ行くためには、まず西へずっとまっすぐに行く。

 で、それから船に乗って、さらに西へ行く必要がある。


「それ聞くと凄く遠いですな」

「まあな。途中何度か街を訪れて補給する感じだ」

「ほうほう。で?」


 で?


「なんだよ」

「ダーリンは皇国にいって、そのSランク勇者から這い寄る混沌の場所を聞き出して……それで?」

「神を殺す」


 即答だ。俺の中にあるのは、あのクソ女への怒りと憎しみだけ。


「神を殺したら?」

「………………」


 もうこの世界には用がない。さっさと帰る……とは、言えなかった。

 ちょっと前なら言っていたかもしれない。でも……今は違う。


 俺はエリスを、愛する女を手に入れてしまった。

 そして、妹分も。(奴隷は知らん)


 こいつらを置いて一人帰る?

 ……それは。


「そんとき、考える」


 エリスがちょっとさみしそうな顔をした後、すぐに笑顔になって「そっか!」と言った。

 俺が帰る選択をしても、多分彼女は、笑顔で送り出してくれるだろう。


 でも……こいつはさみしそうな顔をしていた。俺に帰って欲しくないんだ。

 俺は……どうだ?


 こいつと別れたいのか?

 ……はっ。言うまでもないな。


「安心しろ。俺は一人で帰ることはしない」

「! ほんとっ!」

「ああ。約束するよ」


 エリスが笑顔になると、俺の頬にキスをする。


「だーりんだいすきっ!」


 

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