57.牢屋の中
サラディアスの街にて。
俺はくそ勇者に変わって、ドラゴンを退治してやった。
が。
目立ちすぎたせいで、俺は街から出てきた勇者軍の連中に捕縛。
街の中へと連れて行かれ、そのままデカい屋敷の牢獄にぶち込まれたのだった。
「はぁ……だる……」
牢屋の中には俺とエリスの二人きりである。
シロのやつは別に連行されていった。
「ダーリン……」
ベッドに横たわる俺の隣に、エリスが座っている。
ぶるぶる……と肩をふるわせている。
シロが心配なのだろうか。
まあわからんでもない。俺もまあ、ちょっと心配だ。
「安心しろ。シロはフェンリルだから……」
「狭いながらも楽しい我が家、だね!」
「…………」
「こんな静かな場所で余生を過ごすのもあり……あいたっ!」
俺はあほの背中を蹴飛ばす。
「あーん、なんで蹴るのダーリン?」
「やかましいわ」
シロの心配してるかと思っていたのに。このあほが……ったく。
ずいぶんとのんきな女である。
『まあ、おまえ様がいればシロなんて簡単に助け出せるだろうと、おまえ様を信頼してるがゆえ、のんきに構えてるのではないだろう?』
そうかぁ……?
単に何も考えてないだけのような気がするがな。
「やん♡ ダーリンったら熱烈視線♡ まさかこの牢屋の中で……えっちしちゃう?」
やっぱり何も考えてなかったわ。
ムカついたので蹴飛ばす。
『ところで、おまえ様はどうしておとなしく牢屋に入ってるのだ? 抜け出そうと思えば抜け出せるだろう?』
俺たちの腕には、魔力を封じる腕輪的なものがはめられている。
が。
俺は常に【無毒】を装備してるため、この魔力封じの腕輪は意味がないのだ。
それでも抜け出さない理由なんて一つしかない。
「ここにいれば、敵さんを探す手間が省けるだろ」
『そうか。勇者軍幹部がここにいるんだったな』
俺の目的は一つ。
ここに居る元クラスメイトから、情報を抜き出すことだ。
ここに居れば、勇者が向こうから、様子を見に来るって寸法よ。
『なるほど……あとおまえ様よ。あのエルフ、こちらを見て、生暖かい目をむけてくるぞ』
え?
た、確かに。にこぉ……と笑っている。
な、なんだその目は!
「大丈夫です。ダーリン。私、ダーリンがぼけちゃっても、最後まで面倒みるからね」
「おま! ちが! ぼけてねえ!」
「大丈夫、ダーリンのちょっと変わったところも含めて、愛してるから! いつもちょっと独り言が多いところも、許容範囲内だから」
「やめろぉお! その目で俺を見るなぁ!」
このあほに可哀想な人扱いされてた!?
『ずいぶんと前からな』
ああくそがぁ!
と、そのときである。
「ちょっとぉ! うるさいんですけどぉ~?」
女の声が牢屋の外から聞こえてきた。
その声に、俺は聞き覚えがあった。
『クラスメイトのお出ましか』
「ああ……」
嫌な記憶がフラッシュバックする。
牢屋の前に現れた女は……。
千曲川ビチコ。
いじめグループ主犯格。木曽川の、セフレだった。
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