表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

259/293

259.陰陽師



 上松を無力化に成功した。


「あらら、負けちゃったね。せっちゃん」


 島内はニコニコしながら、こちらにやってくる。

 彼は懐から符を取り出す。


 符を口にくわえて、フッ……! と吹き出す。

 すると符はムクムクと大きくなっていき、人形へと変化した。


 ボーリング玉くらいの大きさだ。

 手足がきちんとあるんだが、顔や口と言ったパーツはない。


「なっ!? なんだそれは!? ま、魔法か!?」


 無一郎が驚愕する。

 一方、島内は言う。


「どっちかというと陰陽術だねー」

「れいのうりょく……?」

「そ。ぼく、陰陽師だから」

「陰陽師……?」


 ……また新しい単語が出てきたな。


「陰陽師っていうのは、陰陽術を使うものの総称だよ。陰陽術っていうのは、占いとか、結界とか、そういうの」


 安倍晴明とかそういうやつか……。


「この人形は、式神。符に霊力をこめ作った、使い魔だよ」


 式神は上松を持ち上げると、わっせわっせ、と運んでいく。

 ベンチに乗っけてあげる。


 ……俺は黒衣ブラックウーズ・コートを上松にかけてやった。

 このままじゃ寒いだろうからな。


「やっぱり、君は、優しいね」


 島内は指を鳴らす。

 一瞬にして、元の公園に戻った。


 さっきまで、雪女の異能で吹雪いていたはずなのに。

 地面には雪のひとかけらすら残っていない。

「これも陰陽術ってやつか?」

「そう。結界だね」


 ……式神といい、結界といい、まじでこいつ異能者だったのか。


「君も異能者なのかい?」


 と無一郎。


「異能者とはちょっと違うかな。異能って生まれ持ったものでしょ? ぼくら陰陽師は、陰陽術……つまり技術を後天的に身につけた人たちのことだから。まあ、一部例外……天才はいるけど」


 島内は陰陽術を、努力して手に入れた口ってわけか。


「それに、やっぱりってどういうことだよ」

「占いで、ちょっと見てたからね。君らが、せっちゃんに接触する姿が」


 ……なるほど。

 こいつ、最初からここに俺らが来るの、わかっていやがったのか。


 最初はとぼけてたけども。

 それに……未来を見れるというのに、上松と俺とを戦わせた。


 そして……こいつに動揺は見られない。つまり……。


「おまえ……上松が負けるのわかってたな?」

「そうだね。まあ、正確にいうと、君が倒れてるせっちゃんに、コートを掛けてあげてる姿が見えたんだ。そこで、わかったんだ。ああ、この人……悪い人じゃあないって」


 ……性格の悪い男だぜ、こいつは。

 自分の女が負けるってわかってて、戦わせたんだからよ。


「正確な未来が見える訳じゃあないから、ぼくもね」

「そうなのか?」


「うん。あくまで占いの範疇だから。見える未来も、断片的なものだし、変わることもある」


 未来が変わることがある……ということは、変えることもできるわけだ。

 ……なんとなくだが、上松が怪異に遭遇してこなかった理由がわかった。


「悪いけど、せっちゃんを家に運ぶの、手伝ってくれる?」

「ちっ。仕方ねえな。おい無一郎。車回してこい」


 はいはい、と無一郎は公園の外に出る。

 やつからしても、異能者の上松、陰陽師の島内、どっちも欲しい人材だろうからな。言うことを聞くんだろう。


「でも……良かったのかよ、島内」

「なにが?」

「負けるとわかってる戦いを、好きな女にさせて」

「ああ……。うん。そうだね。でも、ほら、せっちゃんの寝顔見てよ」


 上松は……のんきに寝息を立てていた。

 とても満ち足りた顔をしてる。


「せっちゃんは、ズッと求めてたんだ。力を全力で振るえる先をね」

「……なら、怪異と戦わせりゃよかったじゃあねえか」


「できないよ」

「なんでだよ?」


 すると、ニコッと笑って言う。


「だって手加減できる君と違って、怪異はせっちゃんを本気で殺そうとするだろう?」


 ……あ、そう。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ