254.決闘
……上松が出てきたのは、19時になったくらいだった。
「せっちゃん。お疲れ」
「……庄司。ふん。なんだ貴様、待っていたのか? 莫迦なやつだ」
校門前に現れた、上松雪が、島内を見るなりそういった。
莫迦なやつって……。
「いやバカはてめえだろ。こんな時間まで補修とかよ」
「! 貴様……今朝の。くく……そうか。組織はやはり、我を殺したいようだな。いいだろう……今ここで……あいたっ」
島内が上松の頭をはたく。
「何をするっ」
「この人達は君に会いにわざわざ東京から来たらしいよ」
「魔都TOKYOから……?」
い、いてええ……。
よくこんな頭のオカシイ女と普通に接してられるな……。
「魔都からわざわざご苦労なことだ。そこまでして我を捕まえたいのか?」
「いや……あんたを捕まえたいとか、利用したいわけじゃあないから。ただちょっと話を聞きたいだけだよ」
無一郎は、異能者だった場合、公安で保護しようとしてるけども。
俺は別にこいつを捕まえようとか、戦おうとかは思っていない。
「ね、ほらこっちのこわそうな人は、悪い人じゃあないでしょ?」
……島内のやつは、どうやら勝手に俺がいい人だとおもってるようだ。
見る目のない男だ。
「せっちゃん。この前の連中とちがって、この人達は優しい人たちっぽいよ。そんな警戒しなくてもいいとおもう」
「あ? この前の連中……?」
なんか別の奴らが、上松に接触していたんだろうか……?
まあ、その辺も聞けば良いか。
「話は大体わかった」
「そうかわかってくれたか」
「つまり……貴様は我に果たしあいを申し込んでいる。そう言いたいのだな?」
「全然話わかってねえ!」
別に果たしたいなんてしたくねえよ……!
「組織の人間じゃあないことはわかった。しょーちゃん……ごほんっ」
しょーちゃん……?
「そこの男が言うとおり、悪いやつじゃあないこともな。だが。貴様」
びしっ、と俺に向かって、上松が指を向ける。
「その殺気、ただ者では無いな」
「まあそこは否定しないけど」
「そうだろう。ならば、決闘だな」
「なんでそうなるんだよ……」
余計なことしたくないんだけど……。
「決闘しないかぎり、我は話を聞かないぞっ。我は決闘者だからな」
決闘って書いてデュエルって読むんじゃねえよ……。
いたすぎだろこいつ……。
「別に、我が全力を出して戦えるような相手と、初めて邂逅し、己の力を存分にふるえるまたとない好機に、浮かれてるんじゃあないからな!」
……あ、そう。
全部説明してくださった、この女。
「松代」
「あー……もう、わかったわかりましたよ。やりゃいいんだろ」
こうして俺は、痛い女と戦うことになったのだった。
 




