250.大変だな
んで、松本空港へとやってきた俺たち。
リムジンを用意してくれてた。そこから、俺たちは上松雪のもとへとむかう。
「で、どこに居るんだ?」
無一郎に、上松の居場所を尋ねる。
「安曇野という街にいるそうだ。松本の北だな」
公安側も上松の情報を得ているようだ。
まあこいつらからすれば、上松は即戦力である可能性が高いからな。
公安は現状、怪異に対するアタッカーがいないらしいし。
無一郎の異能は、姿を変えるってものだし。魔女も怪異狩りに出てこないってことは、戦う力を持ってないってことだろうからな。
「上松は、どういう女なんだ?」
「上松雪。長野県安曇野市出身。家が剣術道場をしてるそうだ。幼い頃から剣道の大会に出場してはいたが、あまり大きな結果が出せずにいた」
「へー……」
意外だ。
帰還者、あるいは、異能者なら、幼い頃から剣道で無双してそうなんだが。
「結果が伴ってきたのは、高校になってからだな。彼女は現在、松本市の高校に通ってるらしい」
「安曇野から?」
「ああ」
なるほど、電車通学か。
「いや、チャリで」
「チャリ!? 安曇野から松本って……ああ、隣接するって言っていたな。ちかいんだな?」
「いや、普通に遠い。車で下道では知って、20~30分くらいはかかる」
……その距離を、チャリで移動してるのか……?
異能者の可能性が出てきたな。
帰還者かもしれない。
「車で送り迎えとかしてもらえないのか?」
と、零美が口を挟む。
「大抵の子は自転車や、電車+徒歩ですね。自動車で送り迎えしてるとこは、あるにはあるけど、でもそんなにって感じらしいですっ」
零美に話しかけられて、無一郎は浮かれてやがった。
そんなにうれしいもんかね……。
「まあ、学生だしな。電車+徒歩がデフォだろ。ちなみに、松本の駅から、その高校まで徒歩でどんなもんなんだ?」
「徒歩で15分くらいだな」
………………徒歩、15分……?
「トンデモナイ距離あるくんだな……」
長野住みの高校生は、大変だなって、改めて思ったのだった。




