232.マジだから
無一郎に勘違いされてしまった……。
めんどくせえ勘違いだ……ったく……。
俺と無一郎、そして零美の三人は、東京に向けて移動していた。
無一郎の運転で、東京まで送って貰うことになったのだが……。
「やはり……そうなのか……!」
助手席に座る俺に、後ろから零美が……声をかけてくる。
「愛する男の隣に座って……」
「ちげーっつってるだろ!」
後ろに居ると、無一郎がにらんでくるから、助手席に座っただけだ。
「松代。僕はノーマルだ」
「だからなんだよ!?」
「おまえの愛は受け取れない」
「そんなもんおまえに向けてねえ!」
ったく!
こいつは何か勘違いしてるようなので、言っておく。
「いいか! 俺にはな、将来誓い合った仲の女どもがいるんだよ!」
「ほぉ……いったいどこに?」
「どこにって……異世界にだよ」
「「…………」」
どっちも、黙りやがった。
あ、あれ……?
「へ、へえ~……そ、そうなんだ~……」
零美? なんで目をそらすのかな?
「そ、そうかぁ~……異世界かぁ~……へえ~……」
無一郎、なにその可哀想なものを見る目は?
あ、あれぇ?
「も、もしかしておまえら……俺が妄想を抱いてる……っておもってる?」
異世界に行って帰ってきたってことを……?
「い、いやぁ……まあ、あるんじゃあないか。ほら……その、最近そういう、その……なんだ。海外の物語……あるもんな……」
と無一郎。
「う、うむ……と、トールキンとか、あ、アタシもその、す、好きだぞ! だから、うん。サイガ君の気持ちわかるぞ。行ってみたいって、うん、思うよね……」
こ、こいつら……!
やっぱり俺が、ファンタジー世界の住人だって、信じてねえ!
俺が妄想で、ファンタジー世界へいって、そこで冒険を繰り広げてきた、って妄想を抱いてる、って思ってるようだ!
「ま、マジだからな!? 本当に異世界はあるんだよ!」
「わ、わかった……うん、わかったよ。あるな、うん……落ち着け、あとでいい心のお医者さん紹介してやるから」
信じてねえぞこいつ……!
「サイガ君……じいじに頼んで、いい頭のお医者さん紹介して上げるからね」
「おまえも俺を異常者だと思ってるのかよ!?」
「まさか! そんなことないよ!」
良かった、異常者だって思ってないようだ。
「見えてる世界は人それぞれだもんね! サイガ君がちょっと常人とはかけ離れたものが見えている感じのあれだとしても、あ、アタシは愛する自信あるからっ」
やっぱりこいつら、俺が異世界にいったっていう誇大妄想を抱いている、頭のやべえ奴って見てるらしい……!
くそがぁ……!
「つーか、無一郎! てめえは俺の強さを見たじゃあねえか! なら……わかるだろ!? なあ!」
「わかるよ」
「だろ!?」
「うん、わかるってばよ。うん、わかるってばよ」
こいつ……!
とりあえず、相手を刺激しないように、わかるってばよしか言わないつもりだ……。
くそっ!
『世界で唯一の帰還者だものな。信じられぬのは当然だろうよ、おまえ様よ』
「うるせえ! 黙ってろ妖刀!」
ひっ……! と無一郎と零美が、怯えたような顔になったのだった。
あああくそ! どうしてこうなるんだよ……
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