197.方針
……さて。
俺は自分の家に戻ってきたわけだが……。
「どうするかな、これから」
異世界と現実とをつなげるアイテムを作り、エリスたちを迎えに行く。
それが俺の目標である。
『あの女神が使っていた、世界扉を作るのが一番だろうな』
大賢者ジョン・スミスの記憶のなかに、【世界扉】はなかった。
創造の力を持つ、いにしえの大賢者すら知らない未知の魔道具。
「手がかりもなしに、作れるか、おまえ?」
『そうだな。難しいかも知れない』
妖刀は無理、とは言わなかった。それだけで、少し救われた気がする。
『二つ、絶対に手に入れる必要がある。世界扉の製法、そして……素材だな』
「かっこつけるなよ。どんなアイテムもその二つは作るときに必要だろうが」
どっちも、この現実世界で探し出すのは難しい。
この世界には神秘ってやつがほとんどないからな。
『そうか? 感じるぞ。あっちの世界の気配を』
「……どういうことだ?」
『おそらく、おぬしが一般人だった頃では、感じられなかった存在が、この世界には隠れてるのだろう』
「……小難しい言い方はいい。何が言いたい?」
『おそらくこちらの世界にも、魔物や、それに近いものはいる』
「! そうなのか……」
『ああ』
……妖刀が嘘を言うとは思えん。
ということは、マジで魔物とか、異世界で見たことがこっちにある。
だとしたら……。
「向こうの魔物がこっち来た、手段がどっかにあるかもしれない……!」
それが世界扉へのヒントになるかもしれない。
『我は魔物の魂を感知できる。魔物は人里にはいないな。山の……奥の方から感じる』
「山……高尾山とかそういうとこか?」
『場所を言われてもわからんが、とにかく人の少ない場所だろうな』
となると……。
「長野、とか?」
あそこは確か周りが全部山……というか、山の合間に街があるような場所だ。
「行ってみるか、長野県」
『路銀はあるのか?』
「…………」
ない。
『学び舎に通わせて貰っていたのだろう? 金はどうしていたのだ?』
「親父の妹さんから援助して貰っていたんだよ」
『ふむ……ではそいつから金を借りるところからだな』
「なら……結局長野にいかねえと。親父の実家がそっちなんだよ」
『おお、なら都合が良いではないか。会いに行きたいと言えば、金くらいだしてくれるのではないか?』
ということで、次の目的地が決まったのだった。




