189.無様な神
女神を【無神論】で人間にした。
攻撃が通るようになった。
ずがんっ! ずがんっ!
「ぎゃ、ぎゃぁああああああああああああああああああ!」
銃弾で女神の手足を撃つ。
急所はあえてはずす。痛みだけを、こいつに徹底的に感じさせるのだ。
自分がやってきたことの意味……すなわち、痛みを知れ。
俺は倒れている女神に近づく。
「おねがいしまうぅ……もうやめてくださぃい……」
「やだね」
妖刀をぬいて、突き刺す。
超電磁力を発動。
やつの体に、高圧電流が流れる。
「$K54qえyt-g64お「^hl6っph@lw、r6hp@45sr6ht;、「@6htl4@h6l@;hljh「;ん6b5yr!!!!!!」
女神が猿の悲鳴のような声を上げる。
泡を吹いて、白目をむいて、気絶。
「【無傷】」
「かはっ! は……はあ……はあ……」
目が覚めて、やつの顔から血の気が引く。
「俺の【無】スキル、すごいだろ? 【無傷】でいくらでも傷を治せるんだ」
「あ、ああ……ああ……」
「でもな、心の傷までは消せないんだよ」
「いやぁあああああああああああああああああああああああああ!」
「さぁ、女神。コンサートを開こうぜ! 演目はおまえの悲鳴だ!」
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああ!」
銃弾、電撃、毒……。
ありとあらゆる手段を持って、こいつに痛みを教える。
その都度、女神は痛ましい、聞いていて不愉快になるような声で叫ぶ。
「ごろじでぇ……! だずげでえぇえええ!」
「いいや、駄目だね」
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!」
こいつは痛みを知らなすぎる。
だから、平気で酷いことができたのだ。
そのせいで、大勢の異世界人がこいつの被害に遭ってきた。
そいつらが感じてきた、痛み、苦しみ、悲しみ……。
それらを、こいつにも同じ分だけ……いや、それ以上の苦痛を与えないと、彼らの無念が晴れない。
「きそがわぁ~……たすけろよぉ~……」
ボロボロになった女神が、木曽川に助けを求める。
だが木曽川は反応しない。
女神のこんな哀れな姿を見て、何を思うのか。まあ、どうでもいいや。
「みさかぁ~……勇者どもぉ~……だれでもいい~……わたしを……たすけろよぉ~……」
女神の声がむなしく響き渡る。
当然、誰もここに現れない。
「どうしてぇ~……」
「当然ですよ」
側で傍観していたエリスが、女神を見下ろす。
「誰も、あなたのことなんて、助けませんよ」
「どうしてよぉ~……」
「だって神は、誰も助けてこなかったじゃあないですか」
……エリスがまっすぐに、ゴミを見下ろしながら言う。
「誰も助けてこなかったのですから、誰も助けないのは当然です。ダーリンを見なさい。彼は、多くを助けてきました。だから……わたしを含め、たくさんの人に、助けて貰い、ここにいるのです」
「ぢ、ぐじょぉ~……くそぉお~……」
女神がボロボロと涙を流しながら、しかし、何も言い返せていない。
人ごときに、神が、言葉でも負けていたのだった




