179.暴走
神坂が相対するのは、七体の強大な魔物……魔王たち。
神坂は目を煌々と輝かせながら戦う。
「ギャシャァアアアアアアアアアア!」
フェンリルが吠えると、無数の氷の矢が出現し、神坂に襲いかかる。
彼女の目はその全てを見切っていた。
「あぶないですぅう!」
槍が一斉に放たれる。
空中を蹴って跳んでいる神坂に襲いかかる。
「せいっ!」
彼女は空中で、もう一度、跳んで見せたのだ。
「ふぁ!?」
マリンが驚くのも無理はない。
彼女は二段ジャンプをやってみせたのだ。
「そ、そういうスキルですぅ?」
「あはっははあ! スキルじゃあないよ! 空気の面をとらえて跳んだだけぇ!」
意味がわからなかった。
空気の面ってなんだ……!? とマリンが驚く。
それどころじゃない!
「シロ! あの槍をとめるですよぉ!」
神坂が槍を避けたことで、こちらに攻撃が襲ってきたのだ。
マリンは速度遅延のデバフの歌をかける。
シロは同じく氷の力で壁を作る。
ズガ!
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
「ぐっ、くぅ……!」
二人が全力を出して、なんとか槍を押さえることができた。
「ぜはあ……! 魔王の力……けたはずれですぅう……」
マリンたちはぐったりしてる。
だが神坂はというと……。
「あはははは! 死ね死ね死ねぇ!」
手刀で、フェンリルに斬りかかってきたのだ。
「魔王だ! 魔王だよね!? 勇者が倒さないといけないラスボスだよね!?」
「み、ミサカ……なんか変……」
シロがつぶやき、マリンもまた同意する。
「ちょっと頭のオカシイ人だったですが……今の彼女は、ちょっと異常ですぅ……」
まるで水を得た魚のように、神坂が魔王に攻撃を与えている。
何かにとりつかれてるように……。
「勘のいい人ですねえ……」
ツボを背負ったマントの男が愉快そうに笑っている。
「呪具師……あんたが何かしてるですぅ?」
「ええ、もちろん。大魔王と、大勇者。お互いに……ねぇ……」
本当に愉快そうに笑っている、呪具師。
こいつは危険だ……とマリンは戦慄の表情を浮かべる。
……こいつを先に仕留めないと。
「私を狙うのは得策じゃあないですよ。というか、そんな暇あるんですか? 大怪獣バトルが、今まさに繰り広げられてますが?」
そうだった。
あのバケモノたちが好き勝手暴れるせいで、周りに被害がでている。
松代 才賀からのオーダーは、神坂を上手く制御しろというものだった。
それはつまり被害を押さえろということ。
……こいつの相手なんてしてる暇はないのだ。
「シロ、一端こいつは無視ですぅ」




