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137.甘いやつ



 黒沢川は爆発四散した。

 それを見て、神坂みさかさんは沈痛な面持ちとなる。


 だが、顔を上げると、俺に頭をペコッと下げてきた。


「助けてくれてありがとう、松代まつしろくん!」


 ……神坂みさかさんは、優しいな。

 こんなくずでも死んだら悲しんであげるなんてな。


 俺は悲しくも辛くもないってのに。


「いや、気にしないでよ」

「…………」


 ぽたぽた……と神坂みさかさんが涙を流し出す。


 やっぱり黒沢川が死んで悲しいのか……?


「生きてた。良かった……松代君……良かった……」

「え?」


「生きてて良かった! 松代君!」


 ばっ、と神坂みさかさんが俺に抱きついてきた!

 しかも、とんでもねえ怪力だ!


 ぎゅぅううううううううううううううううううううう!


「ぐえええええええええええええええ!」

「君が一人捨てられて、ずっと心配で! 転生したあとも各地で君を探して回ってたんだよ!」


 そ、そうだったんだ……。


「ああ、生きてて良かった! うれしいよ!」

「そぉおそっそおぉおお!」


「そ?」

「それ、より……ぐる、じぃい……死ぬ……たすけ……」

「あわわ! ごめんねっ!」


 ぱっ、と神坂みさかさんが俺を離す。

 げほげほ! 


 なんつー怪力……。

 やべえな最上級勇者……。いやそれより……。


神坂みさかさん泣いてた……からさ。黒沢川が死んで、泣いてたのかと思ってたんだが?」


「うん……悲しいよ。でも、勇者の力を悪いことに使ってた、彼のことは許せない」


 悪いことに……か。

 確かにあいつのせいで大勢の無関係の人が、爆弾にかえられ、酷い目にあっていた。


 それは決して許せない行為だし、神坂みさかさんもそこは許せないのだろう。

 たとえ、相手がクラスメイトだったとしても。


「……甘いな、神坂みさかさん。許せない相手ならやっつけるべきだろ」

「だね……。でも、殺したくはないよ。だってクラスメイトだし」


 甘い人だ。

 でも……嫌いじゃない。


『おまえ様とそっくりの甘ちゃんだものな』


 うるせえよ……。

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